最新記事

韓国事情

韓国では「ウェルビン」ブームで、納豆が意外な人気

2018年7月30日(月)16時00分
佐々木和義

当初は健康を気にする50代から60代をターゲットにしていたプルムウォンは、黒豆を使った納豆に続いて、ゆず納豆や黒酢納豆など幅広い層をターゲットにした商品を開発した。清麹醤は調理の際に強烈な臭いを発する。納豆は清麹醤より臭いが少なく、そのまま食べることができる。清麹醤の臭いを好まない世代や1人世帯に広がり、2018年にはより若い層にアピールするため、「わさび国産大豆生納豆」を発売した。

スーパーで売られている納豆は8個入り1万ウォン前後で、日本からの輸入品の方が安い。大手スーパーEマートは2015年に納豆の売上が清麹醤と並ぶとタカノフーズの納豆を輸入してプルムワンより3割ほど安い価格で販売を開始した。清麹醤と納豆の売上げ合計を100としたとき、2016年には清麹醤32.7に対して、納豆は67.3と2倍近くに達した。

乳酸菌好きでヤクルトも人気

健康食ブームと1人飯の増加に加えて、韓国独自の料理に似ていることも消費の拡大に繋がった要因だ。

外国の食品は韓国ではマニアの間で広がる程度だが、大豆を使った食品や発酵食品は日常的に食されており、外国料理を食べなれない人にも抵抗は小さい。

韓国では日常的に豆腐料理を食し、夏バテ防止にコングクスが食されている。コングクスは豆乳スープを使った夏季限定の麺料理で、韓国の夏の風物詩にもなっている定番料理である。

乳酸菌を多く含むキムチやマッコリを好む韓国ではヤクルトも人気が高い。1969年に合弁で創業した韓国ヤクルトは2017年に売上が1兆ウォンを突破した。店頭販売は行わず、韓国全土で1万3000人のヤクルトアジュンマ(ヤクルトおばさん)が路上販売を行なっている(ソウル経済)。

女性の職業が限られていた1970年代、ヤクルトの販売員は人気の職業となったが、勤務時間が短い仕事で子育て中の主婦など希望者は多く、2013年時点で1万3000人の女性が販売に従事している。2014年からは電動カートによる移動販売を行なっており、最寄りのヤクルトアジュンマを探すアプリも登場した。スーパーにはヨーグルトという模倣品も並ぶ人気商品となっている。

納豆もヤクルトも外国食品だが、「ウェルビン」ブームに加えて、伝統的な食品と同じような味と成分をもつことが人々の心を捉えているのだ。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

独メルセデス、安価モデルの米市場撤退検討との報道を

ワールド

タイ、米関税で最大80億ドルの損失も=政府高官

ビジネス

午前の東京株式市場は小幅続伸、トランプ関税警戒し不

ワールド

ウィスコンシン州判事選、リベラル派が勝利 トランプ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 8
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 9
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 10
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 3
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥーが解明される...「現代技術では不可能」
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 6
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 7
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中