人種差別を理由に代表引退のエジル そしてドイツでわき上がる論争
トルコ・エルドアン大統領との写真
大会中のエジル叩きには、実は前哨戦があった。去る5月、エジルはトルコのエルドアン大統領と一緒に写真に収まったのだが、その写真はその後トルコ政府によってまるでプロパガンダのように流用された。そのような背景があったからこそ、今大会中のエジル叩きがエスカレートしたようだ。
エジルとトルコのエルドアン大統領 Kayhan Ozer/Presidential Palace/REUTERS
エジルは声明で、件の写真は政治家へのよくある表敬訪問のようなもので、政治的な意味合いはなかったと説明している。一方で、昨年の記事(緊張が高まるトルコと西ヨーロッパ諸国)にもあるように、選挙は4月に終わったとはいえ在外投票者獲得に余念のないエルドアン政権にしてみれば、エジルのようなドイツのスーパースターとの記念写真は格好の宣伝素材だったのかもしれない。エジルが政治家の思惑に巻き込まれた感があるが、今回の代表引退を受けエルドアンが再びドイツの人種差別を非難したため、さらに事がややこしくなりそうだ。
さらに、ドイツ生まれのエジルが心にトルコを感じていたとしても、彼がドイツに残した功績にかわりはない。いまだにこの写真の件を責め立てるドイツ人がいる一方で、イラン系ドイツ人の人気司会者・ジャーナリストのミケル・アブドラヒは、「問題の写真は人種差別を正当化するために利用されている」と指摘している。
国際連合人権理事会からの勧告
そして今回の件により、ここしばらくドイツの課題となっている人種差別に関するディベートが急激に加速した。