最新記事

人権問題

まるで冷凍庫か犬小屋のような悪環境 トランプが不法移民親子を引き裂いた収容所

2018年7月25日(水)16時12分

7月18日、6月と7月に聴取された宣誓陳述書は、移民のファーストネームだけが記されているが、米税関・国境警備局(CBP)の施設での生活を知る貴重な機会を提供している。米カリフォルニア州チュラビスタにある税関・国境警備局の施設で17日撮影(2018年 ロイター/Mike Blake)

米テキサス州ラレドにある税関・国境警備局の施設に先月収容されていたとき、カレンさんと幼い息子2人はいつも寒さに震えていた。

中米ホンジュラスの暴力から逃れてきた一家は、待機部屋のマットレスもない硬い床の上で寝泊まりしていたとカレンさんは言う。リオグランデ川を渡ってきたため、衣服はまだ濡れていた。

「息子2人を一度に抱いて温めることはできない。抱けない子は寒さに耐えるしかない」

カレンさんは、親と引き離され移民当局の保護下に置かれた子どもの処遇を巡り争われている裁判で、今週提出された200超に上る宣誓陳述書の1つでこう語っている。

6月と7月に聴取された陳述書は、移民のファーストネームだけが記されているが、米税関・国境警備局(CBP)の施設での生活を知る貴重な機会を提供している。カレンさん一家のような不法移民や国境で亡命申請した人たちは、そのような施設に入れられることが多い。その後、解放されるか、長期収容所に送られる。

レイプして赤ちゃんを殺すと麻薬カルテルのメンバーに脅されてメキシコから逃げてきたというセラフィンさんは、カリフォルニア州サンイシドロの施設で十分な食べ物を与えられなかったと言う。

「食事が十分に取れないので、赤ちゃんに母乳を十分与えることができない」と彼女は陳述書で語っている。「娘はおなかが空いているせいでよく泣く」

メイラという名の女性は、アリゾナ州ノガレスの収容所にいたとき、親と引き離された子どもを見た9歳の息子がおびえるようになったと話す。

「息子は鎖でつながれた人を見て、私も同じ目にあうのかと聞いた」と彼女は言う。「米国にはいつ到着するのだろうと彼は不思議に思っていた。すでに米国にいると私は言わない。米国が自分たちをこのように扱うなんて信じないだろう」

長期に及ぶ訴訟

これら陳述書は、当時15歳のジェニー・L・フローレスさんの代理として1985年に米国政府を相手取って起こされた訴訟の原告団のために、弁護士が聴取した。1997年に成立した和解は、収容所で子どもを人道的に扱うための基準を定め、ほとんどのケースで子どもを直ちに解放するよう命じた。

原告団は今週、迅速な子どもの解放など、和解で定められた人道的扱いの基準に、陳述書で述べられた収容所の状況が違反しているとする文書を提出した。

「現在、CBPの施設に3─6日収容されている人が数多くいる」と、フローレスさんの裁判で原告側の主任弁護士を務めるピーター・シャイ氏は言う。過去数カ月は2─3日で、収容期間が延びているという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ゼレンスキー氏「米国の和平案推し進める用意」、 欧

ビジネス

米CB消費者信頼感、11月は88.7に低下 雇用や

ワールド

ウクライナ首都に無人機・ミサイル攻撃、7人死亡 エ

ビジネス

米ベスト・バイ、通期予想を上方修正 年末商戦堅調で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 3
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後悔しない人生後半のマネープラン
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    放置されていた、恐竜の「ゲロ」の化石...そこに眠っ…
  • 7
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 8
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 9
    使っていたら変更を! 「使用頻度の高いパスワード」…
  • 10
    トランプの脅威から祖国を守るため、「環境派」の顔…
  • 1
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 2
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 3
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 4
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 7
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 8
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 9
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 10
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦…
  • 8
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中