最新記事

韓国事情

韓国トヨタのハイブリッド車が好調な理由

2018年7月24日(火)18時39分
佐々木和義

現代・起亜自動車の売上高に対する研究開発比率は2.8%で、トヨタの3.6%、フォルクスワーゲンの5.7%、GMの5.7%などと比べて低く、部品メーカーに至っては、現代モービスの研究開発比率は2.2%で、ドイツ・ボッシュの9.3%や日本のデンソーの8.8%とは比べものにならない。

安全や環境対策など、自動車を取り巻く状況が大きく変化する昨今、研究開発は競争力に直結する。

文在寅政権がトヨタを後押し?

2017年、トヨタが大幅に売上を伸ばした主な要因は2つある。

まずは、フォルクスワーゲンとアウディの失速が指摘されている。2015年9月に米環境保護局が独フォルクワーゲン社のディーゼルエンジン排出規制不正を暴いた。韓国で人気が衰えることはなかったが、同社はフォスクスワーゲンとアウディの一部人気モデルの販売を中断した。

アウディ・フォルクスワーゲンコリア社の不振で、トヨタに加えて、ジャガー・ランドローバーコリアも2017年度にはじめて年間売上1兆ウォンを達成している。

2つめはハイブリッド車である。韓国トヨタは2006年にハイブリッド車「レクサスRX400h」を韓国市場に投入し、2014年からは「360度ハイブリッド戦略」と銘打って、トヨタ車、レクサス車ともハイブリッド車を前面に打ち出してきた。

ガソリン代が高い韓国は、ディーゼル車の人気が高く、LPG車も少なくない。売れ筋のセダンでディーゼル車のラインナップを持たない日本車はドイツメーカーに押されていたが、大気汚染が深刻さを増すとともにハイブリッド車を選ぶ消費者が増加した。

ディーゼル車対策を公約に掲げた文在寅政権もハイブリッド車主体のトヨタを後押しする。

韓国では、プリウスよりカムリとレクサスの方が人気なのだが、韓国トヨタのカムリハイブリッドは約4000万ウォン。同クラスの現代自動車のグレンジャーハイブリッドや起亜自動車のK7ハイブリッドは3000万ウォン台後半で価格差は小さい。

最も人気があるレクサスES300hは韓国車より高いが、同クラスのドイツ車より安い。性能や燃費と価格差からコストパフォーマンスが高いと見る若い層が増えており、2017年度に販売したレクサス車も90%がハイブリッド車だった。

2018年に入ってアウディ・フォルクスワーゲンコリアが新製品を投入したことで、韓国トヨタの輸入車のシェアが落ちるという予測がある。文在寅政権の公約はディーゼル車対策で電気自動車の普及を促進するというものだが、充電インフラの整備が遅れるなか、ハイブリッド車で一日の長があるトヨタの優位性が当面崩れることはないだろう。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

英中銀が金利据え置き、量的引き締めペース縮小 長期

ワールド

ガザ全域で通信遮断、イスラエル軍の地上作戦拡大の兆

ワールド

トランプ氏、プーチン氏に「失望」 英首相とウクライ

ワールド

インフレ対応で経済成長を意図的に抑制、景気後退は遠
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の物体」にSNS大爆笑、「深海魚」説に「カニ」説も?
  • 2
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍、夜間に大規模ドローン攻撃 国境から約1300キロ
  • 3
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ」感染爆発に対抗できる「100年前に忘れられた」治療法とは?
  • 4
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    アジア作品に日本人はいない? 伊坂幸太郎原作『ブ…
  • 7
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 8
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 9
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 10
    「ゾンビに襲われてるのかと...」荒野で車が立ち往生…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる」飲み物はどれ?
  • 4
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の…
  • 10
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 9
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 10
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中