最新記事

経済

移民がもたらす意外な経済的プラス効果

2018年7月14日(土)15時20分
カシュミラ・ガンダー

移民・難民のマイナス面ばかりが語られるが(15年、ハンガリーの首都ブダペスト) Laszlo Balogh-REUTERS

<移民がもたらす悪影響ばかりが語られるが、失業率や税収などの経済的なプラス効果が明らかに>

不法移民は原則的に全員刑事訴追――一時は2300人以上の子供たちを親から引き離したドナルド・トランプ米大統領の「ゼロ・トレランス(寛容ゼロ)」政策は、今も激しい議論を呼んでいる。自身の政策を擁護するようにトランプは6月、ヨーロッパで見受けられる「移民の悪影響」論について触れた。

「アメリカは移民キャンプにはならないし、難民保護施設になるつもりもない」と、彼は言った。「ヨーロッパや他の地域で起こっていることを見てみろ。私の政権下のアメリカで、同じことが起こるのは許されない」

だが、ヨーロッパの難民・移民の影響を分析すると、違った側面が見えてくる。彼らは経済のお荷物になるどころか、経済にプラス効果をもたらしていることが明らかになったのだ。

シリアをはじめ中東各国で人道危機が広がり、それに伴い第二次大戦以来で最大規模の難民危機が発生するのを見て、この研究は行われた。15年のEU内での難民申請数は100万人以上。彼らが欧州に与える影響を調べるために、仏国立科学研究センター(CNRS)やクレルモン・オーベルニュ大学などフランスの経済学者らは、OECD(経済協力開発機構)とEU統計局による15カ国、30年分のデータを分析し、サイエンス・アドバンシズ誌に発表した。

これまでの各種研究とは違い、今回の調査では移民による納税額に注目するだけでなく、彼らの及ぼす経済的な相互作用も調査。居住申請の手続き中は申請先の国に住む権利を法的に認められている「難民」と、居住申請を既に取得している「移民」とを区別して調査した。

公共支出の増加分も相殺

1人当たりGDPや失業率、公共財政などの数値を検討した研究チームは、移り住んだ国々に難民が何ら悪影響をもたらしていないと結論付けた。事実、3~5年たって多数の難民の亡命が認められると、むしろプラス効果が見られるようになった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

サンフランシスコ大規模停電、顧客約11万件で電力復

ワールド

欧州・ウクライナの米提案修正、和平の可能性高めず=

ワールド

ウクライナ協議は「生産的」、ウィットコフ米特使が評

ビジネス

米クリーブランド連銀総裁、今後数カ月の金利据え置き
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 6
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 7
    米空軍、嘉手納基地からロシア極東と朝鮮半島に特殊…
  • 8
    週に一度のブリッジで腰痛を回避できる...椎間板を蘇…
  • 9
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 10
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 9
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中