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環境アフリカのバオバブが次々に枯死する怪現象
バオバブの枯死が相次ぐアフリカ南部は気温上昇の幅が大きい GUENTER GUNI/ISTOCKPHOTO
<樹齢の高いバオバブの巨木が静かに死んでいく――専門家は地球温暖化の影響を疑っているが>
バオバブといえば、アフリカ大陸を代表する樹木だ。オーストラリアやマダガスカルなどでも見られるが、アフリカ大陸では2種が全土に分布している。
よく知られていたのが、南アフリカの「サンランド・バオバブ」と呼ばれるアフリカ最大のバオバブ。樹高は約20メートルで幹の周囲は30メートルを超え、樹齢は1000年以上というこの木を見るために、世界中から観光客が集まった。
ところが16年春、サンランドの木に亀裂が生じ、昨年11月には完全に倒れてしまった。実はアフリカではバオバブの木が枯死する事例が相次いでいる。
専門家がアフリカ南部のバオバブの調査を始めたのは05年。科学誌ネイチャー・プランツ(電子版)でこのほど発表された調査結果によれば、最も樹齢の高い13本のうち9本が、そして最も大きい6本のうち5本が既に枯死するか、幹の最も古い部分が崩れてしまっているという。
過去にも同様の大量枯死の事例があったかどうかを確認するのは非常に難しい。というのも、バオバブの木の多くは幹が空洞で枯れるとすぐに朽ちてしまい、生えていた痕跡すら残らないことも珍しくないからだ。とはいえ、これほど急速に枯死が進むのは通常では考えられないし、調べた限りではバオバブの木が何らかの病気に感染した形跡もないという。
専門家らは、気候変動による乾燥した気候と気温の上昇がバオバブの突然死と関係があるのではと考えているが、今のところ具体的な証拠は見つかっていない。「バオバブの巨木の枯死は少なくとも部分的には気候の大きな変化と関係しているだろうと考えている。気候の変化はアフリカ南部で特に顕著だ」と、調査チームを率いるバベシュ・ボヤイ大学(ルーマニア)のアドリアン・パトゥルトは言う。「だがこの仮説を支持するにせよ、否定するにせよ、さらなる研究が必要だ」
バオバブの枯死が発生しているアフリカ南部の国々では、温暖化が世界平均より早く進行している。近年では雨期の雨の降り方が非常に気まぐれで、長く日照りが続いた後に激しい洪水が起きたりしている。今後20~30年、この地域の気温上昇や干ばつはアフリカ大陸で最も激しいものになると予測する専門家もいる。
温暖化が樹木の大量枯死を招いたとみられる例はこれだけではない。コスタリカの熱帯雨林やアメリカの落葉樹の森でも、気温上昇が原因とみられる木々の枯死が起きている。
明るい日差しの中で力強く立っているイメージのバオバブでさえ、温暖化に悲鳴を上げている可能性がある。気候変動を食い止めるため、私たちの生活や政策をもう一度見直してみる必要があるのではないか。
[2018年7月10日号掲載]