最新記事

インバウンド

30代・年収2億円の中国人夫婦「残念な」東京旅行 日本の誇る「おもてなし」の弱点とは?

2018年7月6日(金)18時20分
劉 瀟瀟(三菱総合研究所 研究員)※東洋経済オンラインより転載

その夜の赤坂での懐石料理、翌日は中国人の中で伝説にもなっている銀座のすし店、ともに、予約だけでかなり苦労した。お店は外国人からの予約を受け付けないので、仕方なくアプリを使い、数万円の手数料を払い、やっと予約できた。この予約はどこかの会社が接待枠としてキープしていたのを転売したものだそうで、キャンセルだけはさせないぞという雰囲気が満々だった。

予約時間の2時間前から、15分ごとに「今どこですか?」「絶対遅刻しないでください」「1分でも遅刻したら、予約保証金1元も返金しないからね(通常は一部が支払いに充当される)」のような連絡が仲介業者から絶え間なく来ていた。「直接予約できないし、仲介業者に依頼したらこんな感じになるし、日本人って本当にまじめですね。私たちはやはり信頼されてないね」と苦笑していた。でも、楽しみにしていたお店だったので、それなりに楽しめ、写真もいっぱい友達にシェアした。

この3店に行けたら、しばらく職場でもママ友でも自慢できる話になるようだった。なお、後者の2店も、お客はほとんど外国人だった。

富裕層向け商売の本質を忘れていないか

どちらのお店も、おそらく、日本企業の接待でさえめったに使えない高級店で、今はインバウンドで来日した顧客で支えられているのではないかと推測できる。英語の表現力が足りず「low level」と言ってしまったり、またはどうせ外国人は繊細でないから「食材が全然違う」とごまかしたり、あるいは、今までドタキャンされ本当に困ったから仲介業者に頼んでずっとリマインド連絡をしてもらおうと思ったのかもしれない。

しかし、このような外国人対応の簡略化、ノーショウ対策がよくできたとしても、高い料金を払う訪日富裕層の本当のニーズを満たしてはいないだろう。

富裕層向け商売の本質を忘れているような気がする。それは、訪日富裕層がここでしか味わえない美味を味わい、その美味と値段に相応のサービスを享受すること。お店側は、外国人にも日本人にも、最高の料理やサービスを提供することにより、高額な売り上げ、リピート、口コミの拡散を獲得することだろう。

つまり、広告しなくても来るという盛況さから離れ、真剣に対応を考える必要がある。メニューの説明方法の標準化や電子化、コンシェルジュ・銀行との提携、紹介制の導入など、もう一歩頑張れば、高級店らしいおもてなしを提供できるのではないだろうか。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:戦闘で労働力不足悪化のロシア、インドに照

ワールド

アングル:フロリダよりパリのディズニーへ、カナダ人

ビジネス

NY外為市場=ドル横ばい、米CPI受け 円は週間で

ビジネス

米国株式市場=3指数が週間で下落、AI巡る懸念継続
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:習近平独裁の未来
特集:習近平独裁の未来
2026年2月17日号(2/10発売)

軍ナンバー2の粛清は強権体制の揺らぎか、「スマート独裁」の強化の始まりか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発される中国のスパイ、今度はギリシャで御用
  • 4
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の…
  • 5
    50歳には「まったく見えない」...信じられないレベル…
  • 6
    川崎が「次世代都市モデルの世界的ベンチマーク」に─…
  • 7
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 8
    「ドルも弱い」なのになぜ、円安が進む? 「ドル以外…
  • 9
    毛沢東への回帰? それとも進化? 終身支配へ突き…
  • 10
    「賢明な権威主義」は自由主義に勝る? 自由がない…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 3
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた実験室」に...抗生物質の「不都合」な真実とは
  • 4
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 5
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 6
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予…
  • 7
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 8
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の…
  • 9
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日…
  • 10
    50歳には「まったく見えない」...信じられないレベル…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 8
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 9
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 10
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中