最新記事

宇宙

スペースXが開発中の有人宇宙船を公開 今年末にも宇宙飛行士を打ち上げへ

2018年6月7日(木)18時30分
鳥嶋真也

難航したクルー・ドラゴンの開発

しかし、その開発は難航した。当初は2016年中に無人での初飛行を行い、2017年から有人飛行が始まる予定だったが、その計画は大幅に遅れることになった。

この遅れは、有人宇宙船を造ることがいかに難しいかを示している。スペースXはNASAと密接に協力し、また退役した宇宙飛行士を雇うなどして開発を続けてきたが、それでも民間企業が一から宇宙船を、それもNASAの定める安全基準を満たす宇宙船を開発するのは困難を極めた。

また、スペースXがあまりにも野心的すぎたことも遅れの要因となった。

ロシアの「ソユーズ」など、多くの宇宙船はパラシュートを使って海や草原に着陸している。しかしパラシュートは風に流されやすく、狙った場所に降ろすことができず、着陸時の衝撃も大きい。

そこでスペースXは、宇宙船に小さなロケットエンジンを装着し、それを噴射しながら着陸させようとした。同社のロケットは垂直に離着陸できることでおなじみだが、それと同じ仕組みを宇宙船にも取り入れようとしたのである。

これにより、パラシュートのように風に流される心配がなく、マスク氏曰く「ヘリコプター並みの精度で」、ゆるやかに着陸でき、さらに月や火星など、大気が薄い、あるいは存在しない天体にも着陸できる。マスク氏は「クルー・ドラゴンは世界で最も進んだ、21世紀の宇宙船だ」と語るほどだった。

しかし、前例のないこの着陸方法に、NASAは安全性の点から懸念を表明。スペースXは安全であることを証明しようとしたものの、時間やコストの点から断念し、従来どおりパラシュートで海に着水する方法に変更されることになった。

space003.jpg

クルー・ドラゴンはもともと、この想像図のように、ロケットエンジンを噴射しながら着陸することが計画されていた。しかし安全性の面から断念し、いまではパラシュートを使うことになっている (C) SpaceX

NASAとスペースXのジレンマ

困難や設計変更を経て開発が続くクルー・ドラゴンは、ようやく最後の試験の段階に入り、初打ち上げの時期が見えてきた。現在のところ、今年の夏ごろに無人での初飛行を、有人飛行は今年末に予定されている。

ただ、NASAはまだ楽観視しておらず、有人飛行が来年以降にずれる可能性も指摘している。ボーイングの宇宙船「スターライナー」も同様に開発が遅れており、両者ともに、ISSへの宇宙飛行士の輸送ミッションができるようになるのは2020年以降になるともされる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

インド中銀、予想通り政策金利据え置き スタンス「中

ビジネス

ソジェン、収益目標引き上げ 第4四半期純利益は予想

ビジネス

インドネシア株・通貨急落、ムーディーズ格付け見通し

ビジネス

かなり慎重にデータ見ていく、時期は予断持たず=利上
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの帝国
特集:トランプの帝国
2026年2月10日号(2/ 3発売)

南北アメリカの完全支配を狙うトランプの戦略は中国を利し、世界の経済勢力図を完全に塗り替える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    グラフが示す「米国人のトランプ離れ」の実態...最新世論調査が示すトランプ政権への評価とは
  • 2
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近したイラン製ドローンを撃墜
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    「右足全体が食われた」...突如ビーチに現れたサメが…
  • 5
    致死率は最大75%のニパウイルスが、世界規模で感染…
  • 6
    「反トランプの顔ぶれ」にMAGAが怒り心頭...グリーン…
  • 7
    ユキヒョウと自撮りの女性、顔をかまれ激しく襲われ…
  • 8
    エヌビディア「一強時代」がついに終焉?割って入っ…
  • 9
    エプスタインが政権中枢の情報をプーチンに流してい…
  • 10
    「エプスタインは悪そのもの」「悪夢を見たほど」──…
  • 1
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 2
    日本への威圧を強める中国...「レアアース依存」から脱却する道筋
  • 3
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「副産物」で建設業界のあの問題を解決
  • 4
    致死率は最大75%のニパウイルスが、世界規模で感染…
  • 5
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵…
  • 6
    「出禁」も覚悟? ディズニーランドで緊急停止した乗…
  • 7
    グラフが示す「米国人のトランプ離れ」の実態...最新…
  • 8
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 9
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れ…
  • 10
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 5
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 8
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 9
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 10
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中