最新記事

情報収集衛星

米朝首脳会談の裏で、日本が打ち上げた事実上の「偵察衛星」の目的とは

2018年6月22日(金)19時10分
鳥嶋真也

情報収集衛星レーダー6号機を搭載したH-IIAロケットの打ち上げ (C) nvs-live.com

2018年6月12日、史上初となる米朝首脳会談が開催された裏で、日本は「情報収集衛星」の打ち上げに成功した。情報収集衛星は、1998年の北朝鮮による「テポドン」発射事件を契機に導入が決定された、事実上の偵察衛星である。現時点で8機が稼働しているが、その将来には課題もある。

情報収集衛星とは

情報収集衛星は、1998年に起きた北朝鮮による「テポドン」発射事件を契機に導入された、「事実上の偵察衛星」である。

当時、日本の宇宙開発は「平和利用に限る」という決まりがあり、偵察衛星のような軍事衛星は保有できず、民間の地球観測衛星が撮影した画像を購入したり、米国から提供を受けたりといった形で衛星写真を利用していた。

しかし、それでは自由に情報が得られないという問題があり、実際にテポドンの発射も、事前に察知できなかったという。その「テポドン・ショック」が、それまでの慣例を打ち破り、事実上の偵察衛星を導入することを決断させた。

情報収集衛星は、日中の雲のないときに地表を細かく見ることができる「光学衛星」と、あまり細かくは見られないものの、夜間や雲があるときでも観測できる「レーダー衛星」の2種類がある(参考)。

打ち上げは2003年から始まり、打ち上げ失敗で2機が失われたものの、これまでに15機が打ち上げられ、現時点で光学衛星が3機、レーダー衛星が5機の、計8機が稼働しているとされる。今後、さらに新しい衛星の打ち上げも計画されている。

情報収集衛星をはじめ、多くの偵察衛星は、地球を南北に、それも周期的にある地点の上空を通過できるように回る軌道を飛んでいる。8機あると、単純計算では半日に1回、どれかの衛星が地球上のあらゆる地点の上空を通過し、観測ができる。

逆にいえば、ハリウッド映画によくあるような、ある場所を常時監視し続けるようなことはできない。

北朝鮮のミサイルにも、災害時の情報収集にも

情報収集衛星の運用は、内閣官房の内閣情報調査室にある内閣衛星情報センターが担当している。これまで1兆円を超える予算が投入された、日本で最もお金のかかっている宇宙プロジェクトでもある。

しかし、導入の経緯やその目的もあって、衛星が撮影した画像が、大々的に公になることはない。情報収集衛星が撮影した画像や分析結果は、特定秘密保護法に基づく特定秘密にも含まれている。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

イスラエル外相「終わりなき戦争望まず」、終結時期は

ワールド

米国防長官、イラン攻撃「最も激しい日に」 最多の戦

ワールド

イランの「黒い雨」、WHOが健康被害を警告 

ワールド

欧州委員長、原発縮小は「戦略ミス」 化石燃料依存に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのミュージカル入門
特集:教養としてのミュージカル入門
2026年3月17日号(3/10発売)

社会と時代を鮮烈に描き出すミュージカル。意外にポリティカルなエンタメの「魔力」を学ぶ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 3
    キャサリン皇太子妃、英連邦デー式典に出席...公開された皇太子夫妻の写真が話題に
  • 4
    「一日中見てられる...」元プロゴルファー女性の「目…
  • 5
    人間ダンサーを連れて「圧巻のパフォーマンス」...こ…
  • 6
    40年以上ぶり...イスラエル戦闘機「F-35I」が、イラ…
  • 7
    身長や外見も審査され、軍隊並みの訓練を受ける...中…
  • 8
    ホルムズ海峡封鎖、石油危機より怖い「肥料ショック」
  • 9
    トランプも無視できない? イランで浮上した「危機管…
  • 10
    イランがドバイ国際空港にドローン攻撃...爆発の瞬間…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 3
    イラン猛反撃、同士討ちまで起きる防空戦はいつまで続くのか
  • 4
    【長期戦はイラン有利】米側の体制転覆シナリオに暗…
  • 5
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 6
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られ…
  • 7
    キャサリン皇太子妃、英連邦デー式典に出席...公開さ…
  • 8
    日本の保護者は自分と同じ「大卒」の教員に敬意を示…
  • 9
    中国はイランを見捨てた? イランの「同盟国」だっ…
  • 10
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 4
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 5
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 6
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 7
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 8
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中