NASA、火星で有機分子を発見──生命が存在した可能性を示す新たな証拠か?
季節に応じて増減するメタン
今回もうひとつの発見として発表されたのは、火星のメタンが季節に応じて増減しているということである。
キュリオシティは地面を探るいっぽうで、大気中にあるメタンについても観測し続けていた。そして6地球年(約3火星年)にわたる継続的な観測によって、ゲイル・クレーターが夏の間はメタンが増え、冬には少なくなる傾向があることを突き止めた。
火星にメタンがあることは、2000年代前半、欧州の探査機などの観測によって判明。メタンは、火山活動や、ある種類の岩石と水との化学反応、そして生物活動などから発生する。
また、メタンは太陽からの紫外線などで破壊されるため、火星では短時間しか存在できないはずであり、いま現在もメタンがあるということは、なんらかの活動によって、いまなお発生し続けていると考えることができる。
今回の発見の肝である、メタンの量が夏に増え、冬に減るということは、地球では起こらず、火星ならではの不可思議な現象である。科学者らは、たとえば地下の氷の中に閉じ込められており、夏にはそれが溶けて漏れ出し、冬には凍って少なくなるという可能性を考えているが、そのメカニズムは特定されていない。
また、そもそもメタンがどのようにして作られたのかもわかっていない。火星には火山活動は確認されていないため、岩石と水との化学反応かもしれないし、微生物の活動によってできたものなのかもしれない。あるいは太古の昔に作られたものが、徐々に放出されているという可能性もある。
火星に挑み続ける人類
人類は火星――とくにそこにいた、あるいはいまもいるかもしれない生命の謎について、約半世紀前から挑み続けてきた。まだ答えは見つからないが、それでも多くのことがわかってきた。