最新記事

火星探査

NASA、火星で有機分子を発見──生命が存在した可能性を示す新たな証拠か?

2018年6月15日(金)12時50分
鳥嶋真也

ゲイル・クレーターを探査するキュリオシティ。探査機が自身のロボット・アームを使って撮影した"自撮り"である (C) NASA

米国航空宇宙局(NASA)は2018年6月7日、火星探査車「キュリオシティ」の探査によって、火星に有機分子があることを発見したと発表した。また同時に、火星にあるメタンの量が、季節に応じて変動していることも発見した(参考)。

有機分子は生命の材料になり、痕跡でもあり、またメタンは生命活動によって発生しうる。このことから科学者は、太古の火星に生命がいたかもしれない、あるいは現在もいるかもしれないことを示す、新たな証拠だとしている。

有機分子の発見

キュリオシティは2011年に打ち上げられた火星探査車で、2012年に火星に到着。1トン近い丈夫な機体と、そこに積まれた最先端の観測機器を駆使し、火星の地表を走り回り、ときたま立ち止まって岩や土を詳しく探査している。

今回の発見は、キュリオシティが火星の「ゲイル・クレーター」という、かつて湖だった場所を探査しているときにもたらされた。キュリオシティが約30億年前の堆積岩を調べたところ、有機分子(炭素や水素を含む物質)が検出された。

有機分子は生命の誕生や生存に必要な材料とされるため、かつて火星に生命が活動していた痕跡である可能性がある。また、有機分子自体は2013年にも、同じくキュリオシティが発見しているが、今回はかつて湖、つまり生命が生存するのに欠かせない水があった場所から見つかったことから、より生命に関連した有機分子かもしれない。

ただ、有機分子は自然にも生成されうるため、この発見がすぐに「火星に生命がいた」ということを示しているわけではない。科学者らも「有機分子がどうやってもたらされたのかはわからない」としている。

もっとも、NASAの科学ミッションの責任者を務めるThomas Zurbuchen氏は前向きに、次のように語る。

「火星の生命を探す現在の取り組みの目標や方法が間違っていないこと、そして今後の探査によって、さらなる驚くべき発見がもたらされるだろう」。

mars002.jpg

キュリオシティが有機分子を発見したゲイル・クレーター (C) NASA

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

トランプ氏、職員解雇やプロジェクト削減を警告 政府

ワールド

インドと中国、5年超ぶりに直行便再開へ 関係改善見

ワールド

7日に米国内農家支援措置発表へ、中国による大豆購入

ビジネス

米国株式市場=主要3指数最高値、ハイテク株が高い 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
2025年10月 7日号(9/30発売)

投手復帰のシーズンもプレーオフに進出。二刀流の復活劇をアメリカはどう見たか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 2
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外な国だった!
  • 3
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最悪」の下落リスク
  • 4
    「人類の起源」の定説が覆る大発見...100万年前の頭…
  • 5
    イスラエルのおぞましい野望「ガザ再編」は「1本の論…
  • 6
    「元は恐竜だったのにね...」行動が「完全に人間化」…
  • 7
    1日1000人が「ミリオネア」に...でも豪邸もヨットも…
  • 8
    女性兵士、花魁、ふんどし男......中国映画「731」が…
  • 9
    AI就職氷河期が米Z世代を直撃している
  • 10
    【クイズ】1位はアメリカ...世界で2番目に「航空機・…
  • 1
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外な国だった!
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    トイレの外に「覗き魔」がいる...娘の訴えに家を飛び出した父親が見つけた「犯人の正体」にSNS爆笑
  • 4
    ウクライナにドローンを送り込むのはロシアだけでは…
  • 5
    こんな場面は子連れ客に気をつかうべき! 母親が「怒…
  • 6
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、A…
  • 7
    【クイズ】世界で1番「がん」になる人の割合が高い国…
  • 8
    高校アメフトの試合中に「あまりに悪質なプレー」...…
  • 9
    虫刺されに見える? 足首の「謎の灰色の傷」の中から…
  • 10
    琥珀に閉じ込められた「昆虫の化石」を大量発見...1…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 4
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 5
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 6
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 9
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 10
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中