「はやぶさ2」、3年半の宇宙航行を終え、小惑星リュウグウに到着
科学的な魅力と、技術的な難しさ
リュウグウのもうひとつの特徴として、ボルダー(岩塊)が多いこと、また100mを超える大きなボルダーも見えることがある。一般的に、リュウグウほどの小さな小惑星は重力が小さいため、他天体が衝突するとボルダーが飛び出してしまい、これほどの数と大きさのボルダーは残らないはずなのだという。
過去のリュウグウになにが起きてこうなっているのかは、今後の大きな研究テーマだという。
ボルダーの多さは科学的な魅力であるいっぽうで、探査機を運用する光学チームの側にとっては頭痛の種になっている。
「はやぶさ2」は今年の秋以降に、リュウグウの表面に着陸し、試料(石や砂)の採取に挑む。着陸場所は平坦であることが望ましいが、これほど全体的にボルダーが多いと、平坦な場所を探し出すのも難しいかもしれない。
津田氏は「(着陸の)難易度が上がることは織り込み済みだったが、これほどとは」と吐露する。
いっぽう理学チームにとっては、着陸が難しい場所ほど科学的に魅力があるので、あえて難しいところに降りるよう要求しがちだという。無理をして探査機を壊すのはもってのほかだが、かといって保守的になりすぎては大きな成果は生み出せないのも事実である。
どこに着陸することになるのかは今後、理学と工学の両チームが話し合って決めることになるが、議論は白熱しそうである。
日本と人類の新たな冒険の始まりを告げる鬨の声
こうした未知の天体を前にした喜びも、着陸できそうな場所がないことへの悩みも、人類未踏の地を訪れることができたからこそ味わえたものである。
これまで宇宙探査は米国などがリードしてきたが、先代の「はやぶさ」、そして「はやぶさ2」によって、日本も大きな存在感を示しつつある。それもトラブル続きだった「はやぶさ」とは違い、「はやぶさ2」はすこぶる順調かつ健全な状態で小惑星にたどり着いた。
これらは日本の宇宙探査が新しい時代に入ったことの証である。そして同時に、太陽系や生命の起源に迫ることを目指した、人類の新たな冒険の始まりを告げる鬨の声でもある。