インドで相次ぐ性的暴行事件 誰も語らない「少年被害」
5月8日、少年がクリケットを楽しんでいた場所近くの部屋に誘い込むと、男はドアと窓を閉め、彼をレイプした──。インドのムンバイに住む14歳の少年が昨年7月、病院のベッドで母親に語った話だ。写真は2016年、ガンジー川の川岸を歩く少年(2018年 ロイター/Jitendra Prakash)
クリケットで遊んでいた場所近くの部屋に少年を誘い込むと、男が部屋のドアと窓を閉め、彼をレイプした──。インドのムンバイに住む14歳の少年が昨年7月、病院のベッドで母親に語った話だ。
少年はその後まもなく亡くなった。両親と警察によれば、事件後に彼が飲んだ殺鼠剤が原因だったという。
警察は、事件の捜査をほぼ諦めている。「新たな手掛りが得られれば、この事件に再び光を当てることもできるが、今のところは迷宮入りだ」と、捜査を担当する警部補はロイターに語った。
モディ首相率いるインド政府は先月、12歳以下の女児に対する性的暴行に死刑を科す制度を導入し、被害者が16歳以下の場合に下する最低刑を厳罰化した。与党優勢の2つの州で8歳の少女と若い女性がレイプされた事件を受けて、大きな抗議行動が起きたためだ。
今回緊急導入された政令は、少年に対する性犯罪には触れていない。政府調査によれば、未成年女子よりも未成年男子の方が被害に遭遇する可能性が高いことが明らかになっている。
この政令は6カ月間で失効するため、政府は法案を提出し、これを法制化する必要がある。政府がこれを法制化する時点で、ジェンダーに中立的な内容へと拡大する予定だと、政府高官は匿名で語った。「少女に適用されることはすべて少年にも適用される」
政府首席報道官にコメントを求めたが回答は得られなかった。
少年に対する性的暴行罪の最低刑は禁固10年であり、16歳以下の少女を暴行した場合の禁固20年に比べて軽い。
「なぜこのような差別があるのか」。レイプされた少年の父親は自宅でロイターの取材に応じ、そう問いかけた。一家が暮らすのは、ムンバイ国際空港近くにある、貧しいインド北部の州などから移ってきた労働者家庭が多く暮らす賑やかな一角にある小さな平屋だ。
母親は嗚咽を漏らしながら、病院で死に瀕した息子に接したときの恐怖を語った。「どうか公正な裁きを」と取材の最後に訴えた。
ロイターが確認した少年の診断書によれば、同性愛者による性的暴行を受けたと記されていた。インドの法律に基づき、レイプの犠牲者とその家族の身元は明かされていない。