攻勢強める北朝鮮 韓国メディアの「脱北謀略説」利用し集団脱北者の返還求める
脱北ではなく「拉致」だった?
ところが、この集団脱北が当時の朴槿惠(パク・クネ)政権によって仕組まれたものだというスクープをJTBCが10日に伝えたことから、大きな波紋を呼んでいる。この報道でJTBCは集団脱北を主導したレストランの支配人ホ・カンイル氏と従業員にインタビューし、彼らの脱北の背後には韓国の国家情報院(旧KCIA)が関わっていたと暴露した。
ホ氏はインタビューのなかで「国家情報院が計画したコース通りに脱北した。女性従業員12人はどこに行くとも知らないでついて来た。私たちは(脱北が韓国与党の)総選挙の勝利に向けて企画されたことを後で知るようになった」と話した。
脱北したレストラン従業員の女性もインタビューに答えて「(脱北した当時、移動したのは仕事の関係で)宿舎を移すことだと思った。マレーシアに到着してタクシーで移動した。到着したところ太極旗が見えた。韓国大使館だった。その時になって韓国に行くということを知った」と脱北が自分たちの意志によるものではないことを明らかにした。そして「今からでも行けるなら母のもとに戻りたい」と北朝鮮に帰国したいという心境を明かした。
JTBCの報道は、北朝鮮レストラン従業員脱北事件が当時の朴槿恵政権と国家情報院、さらに当時の与党セヌリ党の下で計画された「作られた脱北」であり、その狙いはいわゆる"北風"を起こして選挙を有利にするための行為だったと指摘した。つまり本人たちの意志とは関係なく無理矢理脱北させた、いわば「拉致」のようなものだったということだ。
放送の翌日、韓国統一部のベク・テヒョン報道官は定例記者会見で「事実関係の確認の必要がある。集団脱北した従業員については数回にわたって面談を試みたが当事者たちが望まず、事実関係を把握するのには限界があった」と苦しい回答に終始。さらに17日の韓国国会外交統一委員会では「政府としては女性従業員たちは自由意志で韓国に定着し過ごしているため、北側に返すことは全く考えていない」という見解を表明した。
こうした一連の動きについて、検察への告発の動きまで出ている。「民主社会のための弁護士会」はJTBCの報道によって「企画脱北犯罪行為」が明らかになったとして、告発を準備中だ。同会のチャン・ギョンウク弁護士は、「まず支配人のホ・カンイル氏が、従業員を拉致したという点。このほか、国家情報院の選挙介入問題は、公職選挙法違反になりかねないうえ、従業員をハナセンター(脱北者を支援する定着支援組織)に収監したのは監禁罪になり得る。告発の容疑内容は調整中だ」と語った。