最新記事

イギリス

人種問題で注目のロイヤルウェディング 英国黒人社会はどう見ている?

2018年5月16日(水)18時00分

母方の祖先が奴隷だったマークルさんは、ヘンリー王子と共に、ローレンスさん追悼式典に参列。また、パウエル議員の時代からいかに社会の態度が変化したかについての論評も数多く見られた。

だが、ウィンドラッシュ世代を巡るスキャンダルが、真実を示していると話す人もいる。

「(今回の結婚に)意味はない。社会的な意義の上では、ないも同じだ」と、バーミンガム・シティ大学のケヒンデ・アンドリュース社会学准教授は言う。アンドリュース氏は、人種差別は「紅茶と同じぐらい英国的」だと話す。

「英国の白人主義の最高のシンボルに、ちょっとコーヒーがかかったからと言って、何を祝福することがあるというのか。今回の結婚を巡る報道で感じる問題点はそこだ。王室は制度だ。そこに黒人の顔が1つ、とても明るい肌色のきれいな黒人の顔が1つ加わったところで、制度は変わらない」と、同氏は話した。

シンクタンク「英国の未来」が先月行った調査では、英国人のほとんどがマークルさんの人種に注目しておらず、大半が歓迎していることが示された。

しかし、調査に回答した人の12%が、複数の人種の血をひく人が王室に入るのは良くないと回答。25%が、自分の子どもが異なる人種の人と真剣交際したり結婚したりすることに不安を感じると答えた。

また、マイノリティー(社会的少数派)の33%が、ローレンスさん殺害事件のころと同じぐらい人種的偏見は強いと回答。イスラム教徒であるロンドンのカーン市長は先月、テレビインタビューの中で、英国のほとんどの組織が「組織的な人種差別の問題」を抱えていると発言した。

コンプトン直送

ヘンリー王子との交際が報道され始めた当初から、マークルさんの人種的背景は注目を集め、それはポジティブなものばかりではなかった。2016年11月、ヘンリー王子はメディアを批判する異例の声明を出し、一部の記事に見られた人種的偏見を含む論調を非難した。

マークルさんの母ドリア・ラグランドさんが住む米ロサンゼルス近郊の町に関する記事の見出しは、このようなものだった。「ハリーの彼女は、(ほぼ)コンプトン直送。ギャングはびこる母親の自宅発見」

また、ジョンソン英外相の妹で文筆家のレイチェル・ジョンソン氏は、マークルさんが「豊かで別世界のDNA」を英王室にもたらすと書いた。

昨年11月の婚約発表時のテレビインタビューで、このようなメディアの関心について聞かれたマークルさんは、「落胆させられた」と述べた。

「でも私は、最終的には自分や自分の出自をとても誇りに思っている。私たちは、それに特別関心を払ったことはない。カップルとしての私たちの在り方にしか関心がない」と、マークルさんは語っていた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏とゼレンスキー氏が「非常に生産的な」協議

ワールド

ローマ教皇の葬儀、20万人が最後の別れ トランプ氏

ビジネス

豊田織機が非上場化を検討、トヨタやグループ企業が出

ビジネス

日産、武漢工場の生産25年度中にも終了 中国事業の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 7
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中