最新記事

米朝首脳会談

米朝首脳会談シンガポールに中国は──習近平参加の可能性も

2018年5月11日(金)14時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

中国の習近平国家主席 Naohiko Hatta/REUTERS

米朝首脳会談場所がシンガポールになったことに関し、中国は公式には歓迎の意を表しているが、本音では中国外しの一環であると解釈し、習近平がシンガポールに行く可能性もある。大連への電撃訪問は試験飛行だとも。中国政府関係者を取材した。

公式にはシンガポールは金正日のゆかりの地

中国の中央テレビ局CCTVは、昨日(5月10日)の段階で、米朝首脳会談の場所はシンガポールになる可能性が大きいとした上で、シンガポールと北朝鮮との関係に関して「(祖父の)金日成(キム・イルソン)にとっても(父親の)金正日(キム・ジョンイル)にとっても"ゆかりの地"である」として肯定的な見解を述べていた。

というのは北朝鮮とシンガポールが国交を結んだのは1975年。金日成の時代だ。金正日時代に入ってからもアメリカとの交渉の場として何度もシンガポールを選んだ過去がある。したがって「金正恩(キム・ジョンウン)にとっても縁がある場所なのである」とCCTVの評論委員は解説していた。

板門店を選ばなかったのは休戦協定署名国の一つが中国だから

本来なら、朝鮮戦争の休戦協定違反をしてきたのはアメリカなのだから、その休戦協定違反を解消して、休戦協定に約束されている通り朝鮮半島から第三国の軍隊(アメリカ軍)を撤退させることにつながる米朝首脳会談は、板門店(パンムンジョム)で行なうべきだ。中国政府関係者が筆者に不満を漏らした。その見解は概ね以下のようなものである。

1.もし板門店を会談場所に選ぶと、そこは休戦協定に朝鮮戦争参戦国が署名をした場所になるので、北朝鮮は「中国」を際立たせたくない(署名国は北朝鮮、中国、国連軍代表のアメリカ)。

2.もちろん米朝首脳会談が直接「休戦協定から終戦協定への移行」にはならないが、米朝首脳会談がうまくいけば、やがて終戦協定締結へとつながっていく。金正恩は板門店宣言で、その平和体制構築に当たり「韓朝米3ヵ国または韓朝米中4ヵ国」による協議を経て終戦協定に至るとしている。つまり中国を外した「韓朝米3ヵ国」の可能性を否定していないのである。

3.それでいながら、軍事的には中国を頼り切っているというのは、信義にもとる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米関税の影響注視、基調物価の見通し実現なら緩和度合

ワールド

パキスタン、貿易停止など対抗策 観光客襲撃巡るイン

ビジネス

G7は結束維持、米関税巡る緊張も=議長国カナダ財務

ビジネス

関税対策パッケージ決定、中小企業の多角化など支援=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは?【最新研究】
  • 2
    日本の10代女子の多くが「子どもは欲しくない」と考えるのはなぜか
  • 3
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 4
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航…
  • 5
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    【クイズ】世界で最もヒットした「日本のアニメ映画…
  • 8
    「地球外生命体の最強証拠」? 惑星K2-18bで発見「生…
  • 9
    謎に包まれた7世紀の古戦場...正確な場所を突き止め…
  • 10
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 1
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 2
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇した「透けレギンス」投稿にネット騒然
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はど…
  • 9
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 10
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 8
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中