日中韓と日中首脳会談に見る温度差と中国の本気度
北朝鮮が中国外しをした時には、2002年の小泉首相の訪朝に見られるように、突然対日融和策を取る。それを見越した中国は、本気でそれを上回る対日融和策を講じ、北朝鮮を牽制するという態度に出ていると解釈すべきだろう。
日本にとっては、こちらから腰を低くしてお願いしなくとも、相手から寄ってくるという、願ってもない状況が来ている。
日本では自虐的に朝鮮半島問題で「日本外し」が進行し「日本は蚊帳の外」という論調が目立つが、筆者はそうは思わない。むしろ逆だ。北朝鮮も日本を必要とし、中国はもっと日本を必要としている。
それもあってか、多くのプロジェクトに関して日中の間で署名が成され、友好ムードが醸し出された。一帯一路経済構想への勧誘を全面に出せば、反感を買うだろうという節度も心得ているように見えた。
ただ、日中韓3ヵ国で写真撮影をするときに安倍首相が中韓に握手を求めたとき、文在寅大統領が満面の笑顔で応じたのに対し、李克強首相は、手は安倍首相の動きに委ねたものの、固い表情を全く崩さなかったところには、やはり限界を感じた。
アメリカのイラン核合意離脱に関する反応に関しても日本を評価
5月9日未明、トランプ大統領がイラン核合意からの離脱を宣言した。核合意のメンバー国の一員である中国は、トランプ大統領の一方的な離脱を激しく攻撃している。
中国外交部の耿爽(こうそう)報道官は、5月9日の定例記者会見で、「アメリカは国連安保理の第2231号決議を守るべきで、国際的な核不拡散システムや中東の平和安定維持を守り、政治的手段で問題解決に当たらなければならない」と力説している。
これは、北朝鮮に当てはめた場合、アメリカが約束を破る先例を示したのに等しいと、中国の少なからぬメディアがストレートに危惧している。実際、トランプ大統領は、これは北朝鮮においても起こり得ることだと威嚇しているので、ここでは中朝の接近を促す結果を招いている。
日本の河野外相もまた、イラン核合意に関して「今後も維持に向けて、関係国と緊密に協議していく」と、アメリカ追随ではない談話を発表しているのは、高く評価されていいだろう。
中国の中央テレビ局CCTVは、李克強の日中韓首脳会談を大きく扱うと同時に、イラン核合意からのアメリカの離脱表明を批判し、河野外相もアメリカの離脱に批判的であると、言葉を添えている。これもまた珍しい現象だ。
日本の位置づけ
国際社会における今後の日本の役割に関しては、米中朝韓が入り乱れて乱舞する中、日本は初めてと言っていいほど、悪くない位置づけにあると筆者の目には映る。それはひとえに、北朝鮮が多面相的要素を持っており、中朝関係がいびつな友好でしか結ばれていないことに起因することを認識しておきたいと強く思う。
これならば、習近平国家主席の訪日も安倍首相の訪中も可能になっていくだろう。但しそのとき肝に銘じてほしいのは、日本は決して「日本から切望する」という土下座的姿勢を示してはならないということだ。堂々と毅然として、対等に渡り合うことを心がけていないと、中国の戦術に嵌り、あとで手痛い目に遭うだろう。それだけは避けたい。
[執筆者]遠藤 誉
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『習近平vs.トランプ 世界を制するのは誰か』(飛鳥新社)『毛沢東 日本軍と共謀した男』(中文版も)『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』など多数。
※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。