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日本は経済的豊かさと子どもの貧困が同居する奇妙な社会

2018年5月1日(火)13時00分
舞田敏彦(教育社会学者)

生活の様子にも差がある。<表1>は、登校前と下校後の生活行動を比べたものだ。

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高い方の数値は赤字、10ポイント以上の差がある項目には黄色マークをつけた。登校前に「朝食を食べた」「親と会話した」、下校後に「宿題をした」「ネットをした」「バイトをした」という項目で、貧困生徒とその他の生徒の差が大きくなっている。

貧困家庭では、親子の会話(コミュニケーション)が乏しい傾向が見られ、そうした「関係の貧困」は経済的貧困よりも子どもの読解力に強く影響するという(『AERA』2018年4月16日号)。宿題の実施率には20ポイントもの違いがあり、自宅学習の習慣にも差が見られる。

下校後のアルバイト実施率も注目される。貧困生徒に限ると、15歳(高校1年生)にして16.7%にもなる。大学生のような遊興費目当てではなく、学費・生活費稼ぎによるものが大半だろう。

高校就学支援金制度により高校の学費負担は大きく緩和されたが、私立高校ではまだまだ自己負担の額が大きい。制度が施行された後でも、私立では経済的理由による中退者は減っていない(公立は大幅減)。制度の拡充を求める声は強い。

学用品の所持数による子どもの貧困率は、日本は主要国の中で最も高い。経済大国であると同時に子どもの貧困大国でもある。持てる富の適切な配分のあり方について、考え直す必要がある。

<資料:OECD「PISA 2015」
    総務省『世界の統計 2018』

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