最新記事

宇宙

隕石内のダイヤモンド、太陽系初期に存在した大型原始惑星の残骸だった

2018年4月20日(金)16時20分
高森郁哉

2009年2月28日に、スーダンのヌビア砂漠でピーター・ジェニスケンスらが発見した2008 TC3の破片 Credit : Peter Jenniskens (SETI Institute/NASA Ames)

10年前に落下した隕石に含まれるダイヤモンドを分析した結果、この隕石が、太陽系初期に存在していた大型原始惑星の残骸である可能性が高いことが、欧州の研究チームによって明らかになった。

小惑星「2008TC3」と「アルマハータ・シッタ隕石」

スイス連邦工科大学ローザンヌ校の地球惑星科学研究所(EPFL)が発表し、研究論文は「ネイチャー・コミュニケーションズ」に掲載された

EPFLとフランス、ドイツの科学者らによる研究チームは、2008年10月にスーダンのヌベア砂漠で回収された「アルマハータ・シッタ隕石」を調べてきた。これは、直径4メートル超の小惑星「2008TC3」が大気圏に突入し、爆発してから地上に落下した1〜10センチの破片約50個に対して付けられた総称だ。

アルマハータ・シッタ隕石の多くは、ユレイライトと呼ばれるグループに属する。ユレイライトは、太陽系初期に存在した原始惑星を起源とするという仮説が提唱されている。また、ダイヤモンドを含むのが特徴の1つだ。

protoplanetary-disca.jpg

原始惑星系円盤イメージ図 NASA/JPL-Caltech

ダイヤ形成時の圧力から惑星のサイズを推定

研究チームは、アルマハータ・シッタ隕石内のダイヤモンドに含まれる微小な結晶包有物を分析。その結果、ダイヤモンドが形成された時の地層圧が20ギガパスカル以上だった可能性が高いことが分かった。

この地層圧から、初期太陽系の誕生から1000万年の間に、水星から火星程度の大きさの原始惑星の内部でこれらのダイヤモンドが形成され、その原始惑星が他の天体との衝突により消滅したあとの残骸が小惑星2008TC3だと考えられるという。

論文の執筆者らは、「この研究は、ユレイライトの母天体が約45億年前に衝突で破壊される前、そうした大型の『失われた』惑星だったという有力な証拠を示しています」と書いている。


今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

トランプ氏、FDA長官に外科医マカリー氏指名 過剰

ワールド

トランプ氏、安保副補佐官に元北朝鮮担当ウォン氏を起

ワールド

トランプ氏、ウクライナ戦争終結へ特使検討、グレネル

ビジネス

米財務長官にベッセント氏、不透明感払拭で国債回復に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでいない」の証言...「不都合な真実」見てしまった軍人の運命
  • 4
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 5
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 6
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 7
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 10
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 9
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 10
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中