最新記事

医療

武田薬品、7兆円規模の買収で世界トップ10入り目指す 試されるウェバー社長の手腕

2018年4月26日(木)19時32分

4月26日、グローバル企業としての社内体制を着実に整えてきた武田薬品は、アイルランドのシャイアー買収が実現すれば製薬業界で世界のトップ10入りを果たす。武田のウェバー社長(撮影当時はCOO)、2014年撮影(2018年 ロイター/Issei Kato)

武田薬品工業<4502.T>が、英国に上場するアイルランドの製薬会社シャイアー買収に向けて最終的な調整に入っている。グローバル企業としての社内体制を着実に整えてきた武田は、買収が実現すれば製薬業界で世界のトップ10入りを果たす。

長谷川閑史前社長時代から10年以上かけて進めてきたグローバル化を完遂する不可欠な決断といえるが、巨額買収に見合う果実をどう確保するのか、ウェバー社長の手腕が試されることになる。

医薬品業界、買収評価には時間

武田はシャイアーに対し、1株あたり49.01ポンドへの引き上げを含む5回の条件提示を行った。買収総額は約460億ポンド(約7兆円)となり、実現すれば、2016年のソフトバンクグループ<9984.T>による英半導体設計アーム・ホールディングスの買収(約3兆3000億円)を上回り、日本企業の海外M&A(合併・買収)としては過去最大となる。

医薬品業界では、大型薬の特許切れへの備えや、研究開発費の高騰などを背景に、有望な新薬候補を手に入れるためのM&Aが増えている。ただ、その新薬候補を上手く育てられるかどうかを判断するには、長い目が必要だ。

武田が08年5月に約8900億円を投じて買収した米ミレニアムも、当時は高い買い物と言われた。しかし、17年3月期に1432億円億円を売り上げてブロックバスター入りし、武田の主力薬となっている「エンティビオ」は、ミレニアムによる開発品だ。ミレニアム買収は「エンティビオ」目的ではなかったものの、買収後に同薬を大きく育てることに成功した。医薬品企業の買収にはこうしたことが起こり得るため、武田にとってシャイアー買収が過大な投資となるか、グローバル企業へと飛躍する推進力となるかの判断は、現時点では難しい。

ウェバー社長の手腕に期待の声

武田がグローバル化にかじを切ったのは、03年6月に創業家の武田国男氏の後任として長谷川氏が社長に就任して以降のこと。抗がん剤に強いミレニアムの買収に続き、11年9月には新興国への販路確保を狙ってスイスのナイコメッドを約1兆円で買い取った。しかし、社内の仕組みも、規模も、全ての面でさらなる国際化の必要性に直面する中、長谷川氏はクリストフ・ウェバー氏にバトンをつないだ。かつてナイコメッドと武田で働いていた経営コンサルタント、Peter Feldinger氏は、ウェバー社長が入社するまで「両社の統合は停滞していた」と述べ、ウェバー氏の登場が統合に大きな役割を果たしたと評価している。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

パナソニック、アノードフリー技術で高容量EV電池の

ワールド

タイ、通貨バーツ高で輸出・観光に逆風の恐れ

ビジネス

自工会会長、米関税「影響は依然大きい」 政府に議論

ワールド

中国人民銀、期間7日のリバースレポ金利据え置き 金
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 2
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 3
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ」感染爆発に対抗できる「100年前に忘れられた」治療法とは?
  • 4
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 7
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 8
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 9
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 10
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサイルが命中、米政府「機密扱い」の衝撃映像が公開に
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「なんて無駄」「空飛ぶ宮殿...」パリス・ヒルトン、…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中