最新記事

映画

新作『スター・ウォーズ』は最新デジタル技術よりフィルム実写を選んだ

2018年1月23日(火)13時19分
杉本あずみ(映画配給コーディネーター)



『最後のジェダイ』のメイキング映像を見るとCGよりもフィルムでの実写にこだわっている様子がうかがえる STAR WARS / YouTube

よく言われるフィルムの長所は、いくら技術が進んで新しい映像の規格が出てきたとしても、状態の良いオリジナルフィルムさえ残っていれば何にでも対応できる、という点である。デジタルの場合、技術の進化で新しい記録媒体が出てきて、それにアップコンバートした場合、どうしても映像が荒くなってしまい、元の良さをそのまま生かすことができない可能性があるのだと言う。

また、技術的な部分のみではなく「フィルム撮影の方が画質に趣きがある」「柔らかい感じが良い」など、見たときに受け取る感覚でフィルム撮影が好きな業界人も多い。スター・ウォーズのJ.J.エイブラムス監督をはじめ、クリストファー・ノーラン監督、クェンティン・タランティーノ監督などはフィルム撮影を支持していることで有名だ。

一方では、コスト面から見てもデジタルのアドバンテージは多く、デジタルカメラの進化によってドローン撮影など今まで低予算では撮りにくかった撮影も気軽にできるようになった。

巨匠と呼ばれる映画監督の中には、デジタル作品が増えることで、誰でも安く気軽に映画が撮れるようになり、駄作が増えるだろうと主張する人もいるようだ。だがその分まだ知名度のない若手監督や俳優がチャンスをつかむ機会が増えることも予想される。

映画撮影技術、上映方法においてターニングポイントとなる21世紀の今、3Dや4Dなどデジタルだからこそできる技術もあるが、あえてアナログを見直しフィルム撮影した作品が逆に話題を呼ぶようになった。

CGをはじめとする「魅せる」技術が進化する一方で、合成したアクションやCGで作られた爆発の炎でなく、リアルであることに観客が注目して、口コミ戦略としても使われるようになってきた。今回の『最後のジェダイ』でも、宇宙船「ミレニアムファルコン」や背景が実際にスタジオ内に制作され、CGの利用を最小化したことに注目が集まった。

個人的にも、CGが目立つ映画に関して、出始めたころはその技術の素晴らしに感銘を受けたのだが、最近はあまりにも技術だけ目立つ作品を見ると疲れるようになってきた。

2018年、今年もたくさんの映画が生まれていくだろう。デジタルとアナログをうまく織り交ぜた素晴らしい映画が今年もたくさん製作されることを願っている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

りそなHD、社内DXに100億円投資 「生成AIも

ビジネス

パナ、データセンター蓄電の28年度売上8000億円

ビジネス

マクロスコープ:日銀利上げ判断、高市首相の「最終責

ビジネス

英中銀、銀行の自己資本比率要件を1%引き下げ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    大気質指数200超え!テヘランのスモッグは「殺人レベル」、最悪の環境危機の原因とは?
  • 2
    「世界一幸せな国」フィンランドの今...ノキアの携帯終了、戦争で観光業打撃、福祉費用が削減へ
  • 3
    【クイズ】1位は北海道で圧倒的...日本で2番目に「カニの漁獲量」が多い県は?
  • 4
    トランプ支持率がさらに低迷、保守地盤でも民主党が…
  • 5
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 6
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 7
    海底ケーブルを守れ──NATOが導入する新型水中ドロー…
  • 8
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    中国の「かんしゃく外交」に日本は屈するな──冷静に…
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 3
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 4
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 5
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 6
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 7
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 8
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    子どもより高齢者を優遇する政府...世代間格差は5倍…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中