最新記事

映画

新作『スター・ウォーズ』は最新デジタル技術よりフィルム実写を選んだ

2018年1月23日(火)13時19分
杉本あずみ(映画配給コーディネーター)

「最後のジェダイ」撮影スタジオを英王室のウイリアム王子とヘンリー王子が見学したときもCGではなく実物大の戦闘機のセットが組まれていた。 Adrian Dennis/REUTERS

<最新SF映画の『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』の撮影で活躍したのは意外にも4Kや8Kといった最新デジタル技術ではなく半世紀前に発表されたフィルム撮影だった>

最近、映画館では4DXやドルビーアトモス、IMAXなど、さまざまな上映システムで映画を鑑賞できるが、2017年12月15日に公開された『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』もそうした映画の一つ。しかもIMAXでの効果が発揮されることを狙って、前作『フォースの覚醒』に続き、35mmフィルム+一部70mmフィルムで撮影されていたことはご存じだろうか? デジタルでなく、あえてフィルムで撮影されたことが注目されている。

そもそも、IMAXと一般映画の違いはどういうものなのか見てみよう。よく映画館の広告などで「IMAX」とクレジットされた巨大スクリーンの劇場を見たことがあるかもしれない。これはカナダのIMAX社が開発した映画配給プラットフォームである。社名のIMAXとは「IMAGE MAXIMUM」の略で、1.43:1という独自のスクリーン画面比率と高解像度による美しく精細な映像がウリだ。他にも音響や客席配置などにも工夫があるが、大きな特徴はこの2点である。

今から半世紀前の1960年代末に発表されたIMAXだが、実際の映画作品が世界で初めて上映されたのはなんと日本であった。1970年大阪万博の富士グループパビリオンで『虎の仔』という17分の短編作品が上映されたのである。ちなみに、世界で初めてIMAXの3D作品が上映されたのも日本で、1985年のつくば科学万博で『ザ・ユニバース』という映画だった。

撮影については、IMAXの専用カメラを使うことが多い(IMAX上映映画全てがそうではなく、通常映画をIMAX用にアップコンバート、つまり変換して上映することもある)。このカメラ、簡単に何が違うのかと言うと、通常の倍の大きさの特別なフィルムを使い、一般的なカメラでは縦に動くフィルムを横に動かして撮影する。3分間で1回フィルムを変える必要があり(通常は約9分)、特殊なカメラは大きく重いので撮影も手間がかかる。そのため、IMAX映画と言っても作品全編をこのカメラで撮影することは少なく、一部のみに使われることがほとんどである。

newsweek_20180123_123251.png

IMAX用フィルム(左)の1コマは、35mm(右)や70mm(中央)と比べると格段に大きい WikiMedia/Creative Commons 2.0

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

韓国中銀、ウォン安など金融安定リスクへの警戒必要=

ビジネス

米国との貿易協定、来年早々にも署名の可能性=インド

ビジネス

26年度予算案の想定金利3%程度で調整、29年ぶり

ワールド

メルセデス、ディーゼル排ガス不正で米州と和解 1.
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 2
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 3
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 4
    【外国人材戦略】入国者の3分の2に帰国してもらい、…
  • 5
    「信じられない...」何年間もネグレクトされ、「異様…
  • 6
    週に一度のブリッジで腰痛を回避できる...椎間板を蘇…
  • 7
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 8
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 9
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 10
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中