最新記事
テクノロジー

完全オーダーメイドのコンドーム革命

2018年1月16日(火)18時00分
ケビン・メイニー(本誌テクノロジーコラム二スト)

オンデマンド生産工場

一方で、ワンは多様なサイズのコンドームをほぼ自動で製造できる新しい機械を設計した。さらに重要な進歩は、インターネットとクラウド技術により、消費者に直接アクセスできるようになったことだ。

小売店の棚に60種類のサイズを並べることは不可能だろうと、ウェデルは語る。ウォルマートの店内で「自分のサイズ」を測るというのも、かなり難度が高い。ワンのサイトには、自分にぴったりのサイズを選ぶ手順も紹介されている。

コンドーム産業が非規模化を目指す上で、大きなカギを握るのは技術だ。3Dプリントは開発のペースが遅く、家庭用プリンターの実用化はまだ遠い先の話だろう。

一方で、近いうちに大きな飛躍をもたらしそうなのは多品種少量生産システムだ。これなら大規模な製造ラインは必要ない。工場のフロアに3Dプリンターがずらりと並び、オンデマンドでさまざまなサイズのコンドームを生産する光景が目に浮かぶ。

3Dプリンターは大きなスペースを取らないから、1つの企業が各地に小規模の工場を構えることもできそうだ。ドローンを使った配達が実用化すれば、注文から2、3時間後には、自宅の玄関先に「完全オーダーメイド」のコンドームが届くかもしれない。

素材の開発も不可欠だ。ラテックスは3Dプリンターでうまく扱えそうにない。現在、多くの科学者がヒドロゲル製コンドームの開発に取り組んでいる。ヒドロゲルはほとんどが水から成るゲルで、ソフトコンタクトレンズなどに使われている。

グラフェンというナノ炭素素材のコンドームも、英マンチェスター大学などで開発が進んでいる。ヒドロゲルやグラフェンを使えば、3Dプリンターで傷のない丈夫なコンドームを作れるだろう。

ソニーが11月に発売したスマホの新機種「Xperia XZ1」は、最先端の3Dスキャン機能を搭載している。人の顔や物をスキャン撮影すると、アプリが3Dアニメーションを作成。ゲームのアバターとして遊ぶこともできる。

このアプリを少しいじれば、あらゆる臓器の等身大の3D画像を描いて計測することが可能だろう。「正確なサイズ」を送信すれば、よりフィットするコンドームを注文できる。

ぴったりのコンドームがないという事態を、非規模の経済が解決する日も近そうだ。


ニューズウィーク日本版のおすすめ記事をLINEでチェック!

linecampaign.png

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!
気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きを
ウイークデーの朝にお届けします。
ご登録(無料)はこちらから=>>

[2018年1月16日号掲載]

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米経済、26年第1四半期までに3─4%成長に回復へ

ビジネス

米民間企業、10月は週1.1万人超の雇用削減=AD

ワールド

米軍、南米に最新鋭空母を配備 ベネズエラとの緊張高

ワールド

トルコ軍用輸送機、ジョージアで墜落 乗員約20人の
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ギザのピラミッドにあると言われていた「失われた入口」がついに発見!? 中には一体何が?
  • 2
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評家たちのレビューは「一方に傾いている」
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 6
    コロンビアに出現した「謎の球体」はUFOか? 地球外…
  • 7
    「流石にそっくり」...マイケル・ジャクソンを「実の…
  • 8
    冬ごもりを忘れたクマが来る――「穴持たず」が引き起…
  • 9
    【銘柄】エヌビディアとの提携発表で株価が急騰...か…
  • 10
    【クイズ】韓国でGoogleマップが機能しない「意外な…
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 6
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 7
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 8
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 9
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 10
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 10
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中