北朝鮮のミサイル実験が失敗した意味
ミサイル発射実験が失敗した北倉飛行場と徳川市の位置 KCNA-REUTERS, Google Earth
<昨年4月の打ち上げ失敗で国内都市に被害が――発射施設は今や北朝鮮全土に拡散している>
北朝鮮の弾道ミサイル実験が失敗し、人口密集地域で爆発したらどうなるのか? 実は昨年、そんな事故が起きていた。
4月28日、平安南道にある北倉飛行場からIRBM(中距離弾道ミサイル)の火星12型が発射された。ミサイルは打ち上げ後すぐに作動不良となり、北東にある徳川市に落下。工業か農業用の複合施設に大きな被害をもたらした。
北朝鮮の武器計画に詳しい米政府筋によれば、ミサイルの第1ステージのエンジンが1分近く飛行した後に故障。ミサイルは高度70キロにも達することなく墜落した。筆者らは独自に墜落地点の情報を入手。その情報が確かなことは、昨年4~5月に撮影された衛星写真が裏付けている。
4月28日の発射実験の失敗については、綿密な分析が必要だ。特に北朝鮮がいくつもの新しい発射場から弾道ミサイルの発射実験を続けている今、その重要性は一層高い。
北朝鮮が昨年、新たな場所でミサイル発射実験を行ったのは「戦略ロケット軍」の対応力を示すためだと言われている。北朝鮮の主要民間空港であり、中国人以外の外国人訪問者の入国地点である順安空港でも、立ち入り禁止区域から弾道ミサイルが発射された。
同様の事故が首都の平壌をはじめとする人口密集地域で起こる可能性は、依然として高い。昨年4月には28日の実験以前に火星12型の発射実験が2回行われ、どちらも失敗している。このときの実験が海に面した新浦に近い発射場で行われた裏には、理由があったとも考えられる。海に近い場所から発射すれば、発射直後に墜落しても人口の多い都市部のインフラに打撃を与える可能性は低い。
記念式典の画像も証拠に
4月28日の発射実験失敗については、これまであまり報道されていない。報じられたのは、ミサイル1基の発射実験が失敗したということだけだ。
米太平洋司令部によれば、このミサイルが発射された北倉飛行場は、それまでミサイル発射に使われたことがなかった。4月に発射されたこの3基の火星12型はASBM(対艦弾道ミサイル)ではなく、新型のIRBMだった。
火星12型の基本構造は、後に登場したICBM(大陸間弾道ミサイル)の火星14型の土台となっている。火星12型は4月に3回失敗したが、5月14日に初めて発射実験に成功した。
火星12型の4月の発射実験については、北朝鮮当局が図らずも証拠を提供している。