最新記事

子育て

セクハラしない人間に育てる方法

2017年12月22日(金)17時45分
メリンダ・モイヤー(サイエンスライター)

二面作戦が功を奏する

子供が性差別的な言葉を口にしたときはきちんと指摘しよう。ほんの数日前のこと、6歳のわが子が私に「男の子しか入れない」ゲームで遊んだという話をした。私は息子にいくつか質問し、対話を試みた。最終的に彼は、女の子だからという理由だけで女の子を締め出すのは公平ではないとの結論に達した。

09年の研究で、ビグラーらは5~10歳の子供たちに対し、性差別的なことを言われたら言葉で異議を唱えるよう指導を行った。例えば男の子から「女の子はこれで遊んじゃいけないんだぞ」と言われたら、「女の子だからだめって言うのはだめなんだよ」と言い返させるわけだ。

すると、指導期間が終わってから半年経過した後でも子供たちは同じように異議を唱え続けていた。なかでも女の子は、性別が違っても平等だという強い意識を維持していた。

男の子/女の子らしい玩具や衣服を与えたり、男の子/女の子らしく振る舞うことを期待するのはほどほどにしよう。息子がバレエを習いたいと言ってもぎょっとした顔をしてはならないし、娘が女の子であることを理由にスポーツや科学の勉強を諦めないよう支えること。また、会話の中で必要以上に「女の子」「男の子」といった言葉を使わないことも大切だ。

学校の先生に男女で区別をしないよう頼むのもいい。10年のある研究では、幼稚園や保育園で子供を男女別に並ばせたり、グループや個人を性別で区別するなど2週間にわたって性別の違いを強調する実験を行った。すると子供たちの間で性差に対するステレオタイプ的な考えが強まり、性別の異なる仲間に対する評価が下がり、一緒に遊ぶことが少なくなったという。

私たち大人は性差を強調するような慣習にブレーキをかける一方で、性差別や性のステレオタイプについて子供と話し、子供が性差別的でステレオタイプ的な発言をしたら指摘するという「二面作戦」を取るべきだ。子供たちに男も女も平等だという考えを持たせるとともに、平等の前に立ち塞がる問題を理解し、それに立ち向かうための精神的な枠組みを作れるよう支援する――そのためには、この作戦が役に立つはずだ。


ニューズウィーク日本版のおすすめ記事をLINEでチェック!

linecampaign.png

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!
気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きを
ウイークデーの朝にお届けします。
ご登録(無料)はこちらから=>>

© 2017, Slate

[2017年12月19日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

元FBI長官起訴で不正行為 連邦地裁が記録の提出命

ビジネス

各国中銀、11月も金購入 26年末までに価格490

ビジネス

BofA、生産性や収益向上へAIに巨額投資計画=最

ワールド

中国のレアアース等の輸出管理措置、現時点で特段の変
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    悪化する日中関係 悪いのは高市首相か、それとも中国か
  • 3
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地「芦屋・六麓荘」でいま何が起こっているか
  • 4
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    山本由伸が変えた「常識」──メジャーを揺るがせた235…
  • 7
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 8
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 9
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 10
    経営・管理ビザの値上げで、中国人の「日本夢」が消…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 9
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 10
    ヒトの脳に似た構造を持つ「全身が脳」の海洋生物...…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中