最新記事

北朝鮮情勢

国連事務総長「北朝鮮、対話」を──孤立するアメリカ...そして日本

2017年12月11日(月)08時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

さらにCCTVはトランプ大統領がエルサレムをイスラエルの首都と認めた問題に関して何度も特集を組み、国連安保理が9日(日本時間)緊急会合を開いたことを報道した。番組の中では、各国からアメリカの決定に批判や懸念が相次いだこととともに、世界の主要メディアのアメリカに対する非難を紹介している。

アメリカが拒否権を持っているので、アメリカに対する非難決議は採択されないだろうが、安保理の中の英仏を含むヨーロッパ勢5カ国がトランプの宣言に抗議する共同声明を発表し、アメリカの孤立ぶりが鮮明となったとCCTVは勢いよく報じた。もちろん中国の国連大使も抗議を表明したとのこと。

国連は中国主導になるのか?

そうでなくとも中国は、自国がやがてアメリカを追い越し、「中華民族の偉大なる復興」を成し遂げ、「中国の夢」を実現する日に向かって、あらゆる戦略を練り、実行している最中だ。トランプ大統領のエルサレム首都化宣言は、北朝鮮包囲網を弱体化させるだけでなく、アメリカが中東平和を乱し好戦的であるという印象を世界に植え付け、北朝鮮問題で対話を主張してきた中国に圧倒的に有利となる。

アメリカのヘイリー国連大使は安保理会議で、「イスラエルにはすべての国と同様に、首都を決定する権限がある」と詭弁を弄し、「国連は長年にわたり、イスラエルに敵対的な姿勢を示してきた」と国連を批判した。アメリカが国連を敵に回して、どのようにして北朝鮮問題で世界各国が「圧力と制裁」により結束できるというのだろうか?

ヘイリー大使の顔は、対北朝鮮非難決議を主張した時のような勢いはなく、狼狽しているようにさえ見えた。

もちろんグテーレス国連事務総長はトランプ大統領のエルサレム首都化宣言には絶対に反対で、中東平和を著しく乱すと表明している。  

その事務総長と中国は仲がいい。

拙著『習近平vs.トランプ 世界を制覇するのは誰か』で米中のせめぎ合いを書き、「最終的には民主主義が勝たなければならない」と期待したが、トランプがこのようでは、やがて国際社会がトランプを裁き始め、中国を喜ばせることになる。

安倍首相は「100%、ドナルドと共にいる!」とトランプとの固い結束を宣言しているが、エルサレム首都化に関しても「100%、ドナルドと共にいる」のだろうか? だとすれば、「ドナルド」とともに徹底して北朝鮮に圧力をかけ続けていくとした安倍首相の宣言もまた、国際社会で孤立していくことになる。

中国のCCTVは、エルサレム首都化に対する主要国の抗議声明を紹介する中で、「日本だけは態度を曖昧にしている」と強調している。真の友人なら、「ドナルド」を諭(さと)すべきではないだろうか。そうしないと、北朝鮮問題の「圧力と制裁による解決」は失敗し、北朝鮮に利する結果を招くのではないかと懸念する。

endo-progile.jpg[執筆者]遠藤 誉
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『習近平vs.トランプ 世界を制するのは誰か』(飛鳥新社)『毛沢東 日本軍と共謀した男』(中文版も)『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』など多数。

※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

この筆者の記事一覧はこちら≫

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、今後5年間で財政政策を強化=新華社

ワールド

インド・カシミール地方の警察署で爆発、9人死亡・2

ワールド

トランプ大統領、来週にもBBCを提訴 恣意的編集巡

ビジネス

訂正-カンザスシティー連銀総裁、12月FOMCでも
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 2
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃度を増やす「6つのルール」とは?
  • 3
    ヒトの脳に似た構造を持つ「全身が脳」の海洋生物...その正体は身近な「あの生き物」
  • 4
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    「不衛生すぎる」...「ありえない服装」でスタバ休憩…
  • 7
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 8
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 9
    「腫れ上がっている」「静脈が浮き...」 プーチンの…
  • 10
    『トイ・ストーリー4』は「無かったコト」に?...新…
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前に、男性が取った「まさかの行動」にSNS爆笑
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 8
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 9
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 10
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中