国連事務総長「北朝鮮、対話」を──孤立するアメリカ...そして日本
さらにCCTVはトランプ大統領がエルサレムをイスラエルの首都と認めた問題に関して何度も特集を組み、国連安保理が9日(日本時間)緊急会合を開いたことを報道した。番組の中では、各国からアメリカの決定に批判や懸念が相次いだこととともに、世界の主要メディアのアメリカに対する非難を紹介している。
アメリカが拒否権を持っているので、アメリカに対する非難決議は採択されないだろうが、安保理の中の英仏を含むヨーロッパ勢5カ国がトランプの宣言に抗議する共同声明を発表し、アメリカの孤立ぶりが鮮明となったとCCTVは勢いよく報じた。もちろん中国の国連大使も抗議を表明したとのこと。
国連は中国主導になるのか?
そうでなくとも中国は、自国がやがてアメリカを追い越し、「中華民族の偉大なる復興」を成し遂げ、「中国の夢」を実現する日に向かって、あらゆる戦略を練り、実行している最中だ。トランプ大統領のエルサレム首都化宣言は、北朝鮮包囲網を弱体化させるだけでなく、アメリカが中東平和を乱し好戦的であるという印象を世界に植え付け、北朝鮮問題で対話を主張してきた中国に圧倒的に有利となる。
アメリカのヘイリー国連大使は安保理会議で、「イスラエルにはすべての国と同様に、首都を決定する権限がある」と詭弁を弄し、「国連は長年にわたり、イスラエルに敵対的な姿勢を示してきた」と国連を批判した。アメリカが国連を敵に回して、どのようにして北朝鮮問題で世界各国が「圧力と制裁」により結束できるというのだろうか?
ヘイリー大使の顔は、対北朝鮮非難決議を主張した時のような勢いはなく、狼狽しているようにさえ見えた。
もちろんグテーレス国連事務総長はトランプ大統領のエルサレム首都化宣言には絶対に反対で、中東平和を著しく乱すと表明している。
その事務総長と中国は仲がいい。
拙著『習近平vs.トランプ 世界を制覇するのは誰か』で米中のせめぎ合いを書き、「最終的には民主主義が勝たなければならない」と期待したが、トランプがこのようでは、やがて国際社会がトランプを裁き始め、中国を喜ばせることになる。
安倍首相は「100%、ドナルドと共にいる!」とトランプとの固い結束を宣言しているが、エルサレム首都化に関しても「100%、ドナルドと共にいる」のだろうか? だとすれば、「ドナルド」とともに徹底して北朝鮮に圧力をかけ続けていくとした安倍首相の宣言もまた、国際社会で孤立していくことになる。
中国のCCTVは、エルサレム首都化に対する主要国の抗議声明を紹介する中で、「日本だけは態度を曖昧にしている」と強調している。真の友人なら、「ドナルド」を諭(さと)すべきではないだろうか。そうしないと、北朝鮮問題の「圧力と制裁による解決」は失敗し、北朝鮮に利する結果を招くのではないかと懸念する。
[執筆者]遠藤 誉
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『習近平vs.トランプ 世界を制するのは誰か』(飛鳥新社)『毛沢東 日本軍と共謀した男』(中文版も)『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』など多数。
※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。