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ナノテクノロジー「光る街路樹」で街灯が不要に? MIT、発光する植物の開発で大きく前進
「光る街路樹」で街灯が不要に? Image credit: Seon-Yeong Kwak.
マサチューセッツ工科大学(MIT)は今月、ホタルの発光に使われる酵素を用いて植物を自ら発光させることに成功したと発表した。
今のところ光量も弱く持続時間も短いが、将来研究が進めば、街灯を「光る街路樹」に置き換えたり、間接照明になる観葉植物を開発したりできるようになるかもしれない。
MITの「植物ナノ生体工学」研究
MITで「植物ナノ生体工学」という新しい研究領域に取り組むチームが今回の実験を行い、学術誌『ナノ・レターズ』に論文が掲載された。
植物ナノ生体工学は、各種のナノ粒子を植物に組み込むことにより、植物に新たな特徴を与えることを目指す。MITのチームはこれまでに、爆発物を検知するホウレンソウや、葉に備えたセンサーで水不足を警告する植物を研究してきた。MITによると、世界のエネルギー消費の約20%を占める照明は、次の目標として理にかなっていたという。
ホタルの発光に使われる酵素
MITのチームが発光する植物を作る際に利用したのは、ホタルの腹部の発光で重要な役割を担う酵素ルシフェラーゼだ。ルシフェラーゼはルシフェリン(発光素)と呼ばれる分子に作用し、これにより発光反応が起きる。また、コエンザイム(補酵素)Aと呼ばれる分子が、ルシフェラーゼの活動を抑制する反応副産物を除去するのに役立つ。
チームはこれらの分子を運ぶためにナノ粒子と組み合わせ、液体に溶け込ませた。植物(クレソン)をこの溶液に浸してから加圧し、気体の通り道である葉の「気孔」を通じてルシフェラーゼやコエンザイムAなどを送り込んだ。
持続時間と光量
プロジェクトの初期、植物が発光する時間は45分程度だったが、これまでに3時間半まで延ばすことに成功した。また、10センチのクレソンの苗木が発する光は、読書に必要な光量の約1000分の1だという。研究者らは、酵素などの濃度を最適化することで、光量を増やし持続時間も長くできると考えている。
MITのチームはまた、ルシフェラーゼ抑制剤を運ぶナノ粒子を追加することにより、植物の光を消すことにも成功した。将来は遺伝子組み換え技術を組み合わせることで、内部にルシフェラーゼを自ら生成し、周囲の明るさに応じて発光を始めたり止めたりする品種が開発されるのかもしれない。