最新記事

ハロウィーン

やり過ぎコスチュームに、門限・罰金まで...... カナダのハロウィーン事情

2017年10月26日(木)18時00分
モーゲンスタン陽子

アンネ・フランクのコスチュームまで登場

しかし、トロント・スターは、ハロウィーンは「校長や大学の学長を恐怖で縮み上がらせる唯一の祝日だ」と断言する。お化けの衣装が怖いのではない。学校に不適切な格好で登校する生徒たちの心配をしなければならないからだ。

ティーンや大人は、時事問題を反映した仮装や、ウケ狙いのコスチュームを好みがちなのも事実だ。トロント・スターの記者は、立派なスーツ姿でシャツの下に枕を忍ばせ、セクハラ疑惑真只中のハリウッドの大物プロデューサー、ハーヴィー・ワインスタインを装った人々をグーグルで見つけ、幻滅したようだ。

「文化的に不適切」なコスチュームもある。芸者やアメリカ先住民、アラブ人などが「文化の盗用」と非難されることも少なくない。また、女性用のコスチュームに、カウガールや露出の多い小悪魔など、やたらとセクシーで性差別的なものが多いことを問題視する親も多い。

そして、ハロウィーン商戦真只中の今月半ばに大きく物議を醸したのが、ホロコーストの犠牲となった、あの『アンネの日記』の作者、アンネ・フランクのコスチュームだ。

アメリカのミネソタ州に本拠を置く玩具会社Fun.comのハロウィーンコスチューム専門サイトに登場した、ベレー帽に肩掛けバッグに大きな名札、というアンネの姿は、その衣装よりも、ポーズをとって微笑む少女モデルの画像が人々の逆鱗にふれたようだ。問題の衣装はすでにサイトから削除されているが、それでも悪趣味なコスチュームは他にいくらでもあり、教師たちを悩ませているという。

健康志向の「トリート」も

ハロウィーンの日に配る「トリート」にも変化が見られる。最近では健康志向の高まりで、よりヘルシーなハロウィーンの楽しみ方をする家庭が増えているようだ。子供たちが大量の砂糖菓子を得ることを良しとせず、みかんやリンゴ、あるいは鉛筆などのグッズを配る親たちも最近ではめずらしくない。

また、グローブ・アンド・メールによると、カナダ全国で数年前から「トリック・オア・トリート」に代わる「スケート・オア・スウィム」という、スケートリンクや屋内プールのハロウィーン限定割引パスが人気だ。たくさんのお菓子を与えることがためらわれる乳幼児に配るのに最適ということで、毎年売り上げをあげているようだ。家族で楽しめるし、冬が長いカナダにぴったりの「トリート」かもしれない。

さらに、北米ではナッツ類をはじめとした食物アレルギーに苦しむ人々がたくさんいるため、配布用のお菓子はピーナッツを赤線で消した「ナッツ・フリー」のアイコン入りのものが一般的だが、果物やグッズの「トリート」ならそんな心配からも解放される。

アメリカに比べると、カナダはまだまだ子供たちが安心してトリック・オア・トリートを楽しめる印象だ。ハロウィーンの仮装は楽しいが、大人も子供も一緒に楽しむ行事だからこそ、節度と自覚を持って、ヘルシーなトリートとともに楽しみたいものだ。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

プーチン氏、和平に向けた譲歩否定 「ボールは欧州と

ビジネス

FRB、追加利下げ「緊急性なし」 これまでの緩和で

ワールド

ガザ飢きんは解消も、支援停止なら来春に再び危機=国

ワールド

ロシア中銀が0.5%利下げ、政策金利16% プーチ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 4
    ゆっくりと傾いて、崩壊は一瞬...高さ35mの「自由の…
  • 5
    おこめ券、なぜここまで評判悪い? 「利益誘導」「ム…
  • 6
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 7
    中国最強空母「福建」の台湾海峡通過は、第一列島線…
  • 8
    【独占画像】撃墜リスクを引き受ける次世代ドローン…
  • 9
    中国の次世代ステルス無人機「CH-7」が初飛行。偵察…
  • 10
    中国、ネット上の「敗北主義」を排除へ ――全国キャン…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 9
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中