最新記事

地震予知

地震を「1週間前」に予知する方法に光が見えた

2017年10月25日(水)19時12分
メガン・バートルズ

9月のメキシコ地震で家を壊された男性。2度の大地震で死者は300人以上に上った Carlos Jasso- REUTERS

<地震発生時に岩盤と岩盤が擦りあうかすかな音のパターンをコンピューターに学ばせれば、多くの命が救われる>

地球の奥深くの岩石から響く小さな音が、地震の発生を1週間前に知らせてくれるかもしれない。

「ジオフィジカル・リサーチ・レターズ」誌に掲載された最新論文は、地震を発生のかなり前に予知できる可能性がある最先端の地震予知手法が説明されている。この手法が実現すれば、従来の数秒ではなく、数日の余裕を持って安全な場所に避難できるようになるかもしれない。

カギとなるのは、岩盤(岩石でできた地盤)がたてるかすかな音を聞きとるコンピュータープログラムだ。科学者のあいだでは、そうした音の存在は以前から知られていたが、その詳細なパターンはこれまで突き止められていなかった。

論文の共著者であるケンブリッジ大学の材料科学者コリン・ハンフリーズはロイターに対し、「地震の発生前には、岩盤が音をたてる。これは、岩盤の表面が別の表面と擦れあって鳴る音だ」と説明している。「ドアがきしむような音だ」

地球内部では、常にごろごろという小さな音が鳴っている。だがコンピューターをトレーニングすれば、地震が迫っている際に起きる音の変化を識別できるという。地震発生のおよそ1週間前には変化を察知できると、ハンフリーズは言う。

地震が怖くなくなる日

とはいえ、1週間前の地震予知がすぐに実用化されることはなさそうだ。この新たな研究で検証したのは、自然発生する地震ではなく、研究室で人工的に起こした地震活動だけだ。次は地震の巣として知られるカリフォルニアのサンアンドレアス断層など、実際の断層でをテストしたいという。

9月にメキシコで起きた巨大地震では、メキシコシティの地震警告システムが、地震発生の20秒前に住民に危険を知らせた。現行の地震警告システムは、震源地で地震を捕捉することで成り立っている。地震のエネルギー波が岩盤のなかを伝わるスピードは、大気中を電波が伝わるスピードよりわずかに遅い(メキシコシティは震源から約120キロメートル離れていた)。地震が実際に起きるよりもわずかに早く、電波で警告を出せるのはそのためだ。

米地質調査所(USGS)も、米西海岸で同様の警告システムを開発している。米政府の予測では、カリフォルニア州では今後30年以内にマグニチュード6.7以上の地震がほぼ確実に起きるとされている。

たとえ数秒が1分になるだけでも、危険な建物や橋から離れることができる。また、即死や負傷を避けられる可能性もある。だが1週間あれば、そもそも地震はそれほど怖くなる。

(翻訳:ガリレオ)

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

コンゴ・ルワンダ、米仲介の和平協定に調印 鉱物巡る

ビジネス

IMF、日本の財政措置を評価 財政赤字への影響は限

ワールド

プーチン氏が元スパイ暗殺作戦承認、英の調査委が結論

ワールド

プーチン氏、インドを国賓訪問 モディ氏と貿易やエネ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 2
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させられる「イスラエルの良心」と「世界で最も倫理的な軍隊」への憂い
  • 3
    高市首相「台湾有事」発言の重大さを分かってほしい
  • 4
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 5
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 6
    「ロシアは欧州との戦いに備えている」――プーチン発…
  • 7
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 8
    見えないと思った? ウィリアム皇太子夫妻、「車内の…
  • 9
    【トランプ和平案】プーチンに「免罪符」、ウクライ…
  • 10
    【クイズ】日本で2番目に「ホタテの漁獲量」が多い県…
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 4
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 5
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 6
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 7
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 8
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 9
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 10
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中