最新記事

中国予測はなぜ間違うのか

石平「中国『崩壊』とは言ってない。予言したこともない」

2017年10月17日(火)15時00分
高口康太(ジャーナリスト、翻訳家)

Newsweek Japan


171024cover-150.jpg<ニューズウィーク日本版10月17日発売号(2017年10月24日号)は「中国予測はなぜ間違うのか」特集。政治も経済も問題だらけで間もなく破綻する――そんな「中国崩壊論」はなぜ生まれ、なぜ外れるのか。党大会を控えた中国を正しく読み解く方法を検証する本特集から、「崩壊本」の代表的著者、石平のインタビューを転載する>

08年の北京オリンピックの前後から、「反中国本」「中国崩壊本」はまるで雨後のたけのこのように日本で出版されてきた。

『中国崩壊カウントダウン』『中国の崩壊が始まった!』『私たちの予測した通り、いよいよ自壊する中国!』......。あおりにあおったタイトルの本が今も書店には並ぶ。なぜ、この種の書籍の出版は続くのか。複数の「崩壊本」を執筆してきた中国問題・日中問題評論家の石平(せきへい)にジャーナリストの高口康太が聞いた。

◇ ◇ ◇

――いわゆる「中国崩壊論」に対する批判が最近高まっている。現実とは真逆ではないか、という指摘だ。あなたは崩壊本の代表的筆者として位置付けられている。

誤解があるのではないか。私自身のコラムや単著で「崩壊」という言葉は原則的には使っていない。対談の中で触れたことはあるが。

私の主張は「崩壊」というより「持続不可能」という表現が正しい。消費拡大を伴わず、公共事業と輸出に依存した、いびつな経済成長は持続不可能という内容だ。

――『中国──崩壊と暴走、3つのシナリオ』という単著もあるが。

書名は出版社の管轄だ。見本が送られてくるまで私がタイトルを知らないこともあった。出版不況の中、出版社がなるべく過激なタイトルを付けたい気持ちは理解できる。出版社がなければ言論人は本が出せない。

譲れない一線もある。それは人種差別だ。中国を批判しても漢民族を差別してはならない。この基準が守られないなら本の出版は撤回してもいい。実際に一度決まった書名を抗議して変えたこともある。

人種差別以外の場合では、書名を変えるよう出版社とよくケンカするがいつも私が負けている(笑)。

――では共著で言及している「崩壊」とは、具体的にどのような状況を意味しているのか。

(バブル経済崩壊で)日本も崩壊したが、日本人全員が路頭に迷ったわけではない。同様に中国経済もいきなりゼロになることはあり得ない。

ただし、中国共産党の体制は国防費と治安維持費の拡大、出稼ぎ労働者のための雇用創出など経済成長を前提としているため、成長がストップまたは鈍化すれば現体制を維持できない。私が言う「崩壊」とはこの意味だ。

――地方と中央の統計誤差など一部の問題をあげつらい、中国全体の危機に仕立てているのでは。

私は経済学者ではないので、細かい数字は論評していない。しかし中国の統計が正式な実態を把握していないことは間違いない。危機については前述のとおり構造的な問題だ。

【参考記事】日本の対中観が現実と乖離する理由----阿南友亮教授インタビュー

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ECBの次回利下げ、9月より後になる公算=リトアニ

ワールド

トランプ氏、日本に貿易巡る書簡送付へ 「コメ不足な

ワールド

米政権がロス市提訴、ICE業務執行への協力制限策に

ビジネス

米国株式市場=S&P・ナスダック最高値更新、貿易交
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 2
    普通に頼んだのに...マクドナルドから渡された「とんでもないモノ」に仰天
  • 3
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。2位は「身を乗り出す」。では、1位は?
  • 4
    「パイロットとCAが...」暴露動画が示した「機内での…
  • 5
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 6
    ワニに襲われ女性が死亡...カヌー転覆後に水中へ引き…
  • 7
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 8
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 9
    飛行機のトイレに入った女性に、乗客みんなが「一斉…
  • 10
    顧客の経営課題に寄り添う──「経営のプロ」の視点を…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 3
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門家が語る戦略爆撃機の「内側」と「実力」
  • 4
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 5
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 6
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 7
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 8
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた…
  • 9
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉…
  • 10
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 6
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 7
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 8
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 9
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中