最新記事

日本外交

対北朝鮮「圧力一辺倒」は日本だけ?

2017年10月10日(火)17時20分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)


日本は?

さて、日本。安倍首相はあくまでも「圧力によって北朝鮮政権の考え方を変えさせる」と主張し続けているが、プーチンの言っている通り、北朝鮮が経済制裁などの圧力ごときで考え方を変えたりするはずがない。これは夢物語に過ぎない。

軍事的手段を行使するなら別だ。アメリカか中国が軍事行動に出るならば、北は崩壊するか、あるいは崩壊の瀬戸際に立ち変化が起こり得るが、それ以外では「北朝鮮の考え方を変えさせる」などという夢物語はないだろう。

また「対話のための対話」という意味不明な常套句を頻繁に使っているが、いったいどこの世界に、この緊迫した中で「対話のための対話」などということがあり得ようか?北の暴走を止めさせるための対話であって、それ以外の対話が存在するとはあり得ない。過去に失敗した例が数多くあるのは承知している。しかし今は中朝関係がまるで違う。歴史上最悪の関係にあり、中国の国力が明らかに優っている。いざとなれば、何でもやるだろう。中国はまだいくつものカードを使わずに持っている。

先般、日本記者クラブにおいてだったか、党首討論で会場にいた記者から「安倍さんは圧力一辺倒を主張しているが、水面下の接触はあるのか?」といった趣旨の質問があったように思う。すると安倍首相は「それは水面下ですから(あったとしても...)」というニュアンスの回答をしていたように記憶する。

それは確かにそうだろう。水面下の話をするのは筋違いかもしれない。
しかし、北朝鮮をめぐる六ヵ国協議に参画している国の中で、日本以外の国は全て、独自の対話チャンネルを持っていてそれを表明しており、今やその「独自の対話チャンネルに誰が先手を打ち、北朝鮮を"手中"に治めるか」の競争をしているという様相を呈しているとさえ言えよう。

朝鮮戦争の国連軍の本部は今も日本にある

「国連軍」という言葉をネットで検索しても分かる通り、国連軍には大きく分けて2種類あり、一つはいわゆる平和維持活動(PKO)のための軍隊で、もう一つは朝鮮戦争の際の国連軍である。後者の朝鮮戦争における国連軍は、1950年6月に始まった朝鮮戦争に対して、韓国不利と見たアメリカが国連に呼びかけて急ごしらえで組織した軍隊だ。

このとき日本はアメリカの占領下にあり、マッカーサーが日本に総司令部を置いていたので、アメリカを中心とする朝鮮戦争の国連軍の司令部も日本にあった。
1953年7月の朝鮮戦争休戦に伴い、本来ならこの朝鮮戦争国連軍は休戦協定の約束通り解散しなければならなかったはずだ。しかし米韓が軍事同盟を結んで、アメリカが休戦協定を守ろうとしなかった。日米安保条約を既に結んでいた日本は、アメリカの意向に沿って、休戦協定に違反した朝鮮戦争国連軍の施設を日本に置く羽目になった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、加・メキシコ首脳と貿易巡り会談 W杯抽

ワールド

プーチン氏と米特使の会談「真に友好的」=ロシア大統

ビジネス

ネットフリックス、ワーナー資産買収で合意 720億

ビジネス

米国株式市場=小幅高、利下げ期待で ネトフリの買収
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 2
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い国」はどこ?
  • 3
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「ボタン閉めろ...」元モデルの「密着レギンス×前開…
  • 6
    左手にゴルフクラブを握ったまま、茂みに向かって...…
  • 7
    主食は「放射能」...チェルノブイリ原発事故現場の立…
  • 8
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 9
    『羅生門』『七人の侍』『用心棒』――黒澤明はどれだ…
  • 10
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 1
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 2
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 3
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 4
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 5
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 6
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 7
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 8
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 9
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 10
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中