最新記事

朝鮮半島

中国軍が「奇襲」に備えて演習、朝鮮半島で軍事的緊張高まる

2017年9月7日(木)17時50分
トム・オコナー

北朝鮮沖の軍事演習で発射された中国軍のHQ-61(紅旗61)地対空ミサイル(9月5日)  Li Ming/Xie Biao/China Military Online

<9月3日に北朝鮮が行った過去最大規模の核実験やトランプ米政権の強硬姿勢を腹にすえかねた中国の意思表示か>

北朝鮮が過去最大規模の核実験を実施した2日後の9月5日、中国は「奇襲攻撃」に備える軍事演習を行った。韓国軍が北朝鮮の核実験場への攻撃を想定したミサイル発射訓練を行い、米軍との合同演習も行うと発表した翌日だ。

中国軍の公式サイトによると、演習は中国中部の黄海と西朝鮮湾に近い渤海北東の沿岸部(北朝鮮沖)で実施された。

中国は公式にはロシアと連携して北朝鮮問題の「平和的な解決」を目指す方針を堅持しているが、その一方で常設軍としては世界最大の兵力を誇る自国軍の防衛能力を北朝鮮に見せつけた格好だ。

【参考記事】中国が北朝鮮沖で軍事演習、米朝を威嚇

奇襲攻撃に対する「兵員の迅速な対応能力と実際の戦闘レベルを有効にテストできた」と、公式サイトは報告している。

防空大隊が車載式のHQ-6(紅旗6)地対空ミサイル、携帯式のFN-6(飛弩6)防空ミサイルの発射訓練を実施。車両に機関砲を搭載したLD-2000(陸盾2000)近接防空システムとの共同運用の訓練も行われた。

前日にも中部・湖北省で中国軍の幹部候補生たちが実弾演習を行ったばかりだ。

トランプは韓国軍にテコ入れ

中国も北朝鮮の核開発には苛立ちを募らせており、先月初めには国連安全保障理事会でアメリカが主導した北朝鮮への制裁強化の決議案に賛成した。

北朝鮮は7月に行った2度の大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射実験に続き、9月3日に6回目の核実験を実施。爆発の威力は過去5回の核実験の合計を上回り、水爆実験だった可能性が高い。中国外務省は非難声明を出したが、習主席は今のところコメントを控えている。

ドナルド・トランプ米大統領が日本と韓国など地域の友好国への軍事的支援を増強する意向を示すなか、中国外務省は米朝間の軍事挑発がエスカレートすれば全面戦争につながりかねないと懸念を表明した。

【参考記事】北朝鮮問題、アメリカに勝ち目はない

トランプが韓国軍の攻撃能力を高めるために韓国が保有する弾道ミサイルの弾頭重量制限の解除を認めたことについて、中国外務省の耿爽報道官は「朝鮮半島情勢は依然として非常に複雑で不安定だ。この状況がエスカレートしないよう関係各国が努力することが望ましい」と語った。

南シナ海と東シナ海の島々の領有権問題で米政府と対立する中国は、アジア太平洋地域のおける米軍のプレゼンスの高まりを強く警戒している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

9月機械受注は前月比4.2%増、基調判断は据え置き

ビジネス

日経平均は反発で寄り付く、足元マイナス圏 注目イベ

ワールド

トランプ氏、ABCの免許取り消し要求 エプスタイン

ビジネス

MSとエヌビディア、アンソロピックに最大計150億
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影風景がSNSで話題に、「再現度が高すぎる」とファン興奮
  • 4
    マイケル・J・フォックスが新著で初めて語る、40年目…
  • 5
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 6
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 7
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 8
    「嘘つき」「極右」 嫌われる参政党が、それでも熱狂…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「日本人ファースト」「オーガニック右翼」というイ…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中