最新記事

移民

トランプの新たな移民叩きが始まった、標的はオバマの「ドリーマー」

2017年9月6日(水)18時44分
ジョシュ・サウル

ホワイトハウス前でDACA廃止に反対する人々(9月5日) Kevin Lamarque-REUTERS

<親に連れられるなど幼くしてアメリカにやってきて、オバマ政権に強制送還を免除してもらった80万人の若者たちが追放される?>

トランプ政権は9月5日、バラク・オバマ前大統領の政策をまた一つ、ひっくり返そうとした。入国時に15歳以下で、必要な証明書類を持たない若年層移民に対して、一定の条件を満たせば一時的な就労を許可し、強制送還を免除するDACA(Deferred Action for Childhood Arrival)を廃止するというのだ。

トランプは9月5日午前のツイートでDACAに対する不満を表明。「我が国は法治国家だ。我々は今後、不法移民を奨励することはない」とツイート。「我々は間違いなく、アメリカ国民の利益を最優先する!」と記した。

【参考記事】「日本に移民は不要、人口減少を恐れるな」水野和夫教授

DACA撤回に関する発表を行ったジェフ・セッションズ司法長官も、長年DACAは「憲法違反」と反対してきた人物。5日午前の会見でも、「法に則った移民制度を維持するためには、この国に来たいという者すべてを受け入れるわけにはいかない」と述べ、DACAを止めればアメリカの安全と保安に貢献するはずだと続けた。「オバマ前政権のもとでまかり通ってきた法手続きの軽視を終わらせることは、最初の重要なステップだ」

オバマは2010年末、「ドリーム法」と呼ばれる移民制度改革案を成立させようとした。幼いころに不法にアメリカに入国したが必要な証明書類を持たない若年層の移民「ドリーマー」に、合法的に滞在できる道を開くことが狙いだった。しかし法案は共和党と一部の民主党議員の強い反対に直面した。

英語しか知らない若者も

米政治情報サイト「ポリティコ」によると、当時セッションズは、以下のように指摘していた。「ドリーム法が成立すれば、失業中のアメリカ国民は、新たに永住権を認められた多数の労働者との競争を強いられる。この法案は、不法に入国してきた外国人に法的保護を与え、連邦政府の教育補助金の給付対象とすることで、限られた財源を圧迫する」

ドリーム法は結局成立せず、オバマは2012年6月に署名した大統領命令で、証明書類を持たない若年層の移民について、強制送還を一時停止し、一時的な居住権申請を認める大統領命令を発した。

【参考記事】【写真特集】世界が抱える環境移民という時限爆弾

オバマは、厳しいバックグラウンドチェックを通り抜けてアメリカで暮らしてきた若者80万人を危機にさらすトランプ政権の動きをフェイスブックで批判した。「彼らはアメリカで学校に行き、就職し、星条旗に忠誠を誓ったアメリカ人だ。彼らドリーマーは『書類』以外のあらゆる意味でアメリカ人だ。アメリカしか知らない若者もいる、英語しか知らない若者もいる」

米議会が早急に救済法を成立させない限り、これらの若者は母国に強制送還されることになる。

(翻訳:ガリレオ)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ドイツ輸出、5月は予想以上の減少 米国向けが2カ月

ビジネス

旧村上ファンド系、フジ・メディアHD株を買い増し 

ワールド

赤沢再生相、米商務長官と電話協議 「自動車合意なけ

ビジネス

日経平均は反発、対日関税巡り最悪シナリオ回避で安心
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に...「曾祖母エリザベス女王の生き写し」
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」だった...異臭の正体にネット衝撃
  • 4
    アリ駆除用の「毒餌」に、アリが意外な方法で「反抗…
  • 5
    「ヒラリーに似すぎ」なトランプ像...ディズニー・ワ…
  • 6
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 7
    米テキサス州洪水「大規模災害宣言」...被害の陰に「…
  • 8
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 9
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 10
    中国は台湾侵攻でロシアと連携する。習の一声でプー…
  • 1
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 2
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 3
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸せ映像に「それどころじゃない光景」が映り込んでしまう
  • 4
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 5
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 6
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 7
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 8
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 9
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 10
    アリ駆除用の「毒餌」に、アリが意外な方法で「反抗…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 4
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 5
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 8
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 9
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中