最新記事

災害

米国襲ったハリケーン「ハービー」 経済損失、緊急支援や保険金は ?

2017年9月2日(土)12時03分

8月30日、米テキサス州を直撃した大型ハリケーン「ハービー」は、進路に当たる地域に甚大な被害をもたらしている。写真はテキサス州で住民救出用のボートに乗る男性(2017年 ロイター/Jonathan Bachman)

米テキサス州を直撃した大型ハリケーン「ハービー」は、進路に当たる地域に甚大な被害をもたらしている。テキサス州のアボット知事は30日、今回の被災地域は2005年の「カトリーナ」襲来時よりも大きいと述べ、連邦政府から1250億ドル(約13.8兆円)以上の支援を受ける必要があるとの見方を示した。

被災地への公的支援や保険金の支払い請求など、これまでに示されているハービー襲来の経済的影響の試算は以下の通り。

●緊急支援

米議会はテキサス、ルイジアナ両州向けに数百億ドル規模の緊急支援を迅速に承認する見通し。過去のハリケーン襲来における連邦政府支援で金額が最も大きかったのは05年のカトリーナの1102億ドルで、12年の「サンディ」の539億ドルがこれに続く。

ワシントン・ポスト紙はトランプ大統領が早ければ来週にも議会に包括的な支援を要請すると報じた。

緊急支援は主に被災地からの要請に基づく。一部は連邦緊急事態管理庁(FEMA)を通じて保険未加入の住宅保有者への助成として実施されるほか、中小企業庁(SBA)が企業や非営利団体、住宅の所有者や借り手に低利融資を行う。

連邦政府の緊急支援は最終的に米国の納税者の負担となる。シンクタンク「センター・フォー・アメリカン・プログレス」の試算によると、2011─13年に家計が負担した災害支援コストは1世帯当たり年平均400ドル前後。

●保険金の支払い

ハリケーンはさまざまな種類の物的損害を引き起こすが、ハービーはヒューストン近隣に豪雨をもたらしたため、洪水が被害の中心となっている。

民間の損害保険では通常、洪水は補償の対象外となっている。米国で洪水を補償対象とするのは、連邦政府の保険である「国家洪水保険プログラム(NFIP)」のみ。NFIPはオールステートやアシュラントなど民間の保険会社が取り扱っている。

NFIPは既に多額の負債を抱えている。米議会は被災地への緊急支援に加えて、ハービー襲来に伴う保険金請求に対応するためにNFIPに対する数十億ドルの規模の資金注入を迫られる公算が大きい。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米の和平案、ウィットコフ氏とクシュナー氏がロ特使と

ワールド

米長官らスイス到着、ウクライナ和平案協議へ 欧州も

ワールド

台湾巡る日本の発言は衝撃的、一線を越えた=中国外相

ワールド

中国、台湾への干渉・日本の軍国主義台頭を容認せず=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネディの孫」の出馬にSNS熱狂、「顔以外も完璧」との声
  • 4
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 5
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 6
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 7
    「裸同然」と批判も...レギンス注意でジム退館処分、…
  • 8
    Spotifyからも削除...「今年の一曲」と大絶賛の楽曲…
  • 9
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 10
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 9
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 10
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中