米国襲ったハリケーン「ハービー」 経済損失、緊急支援や保険金は ?
8月30日、米テキサス州を直撃した大型ハリケーン「ハービー」は、進路に当たる地域に甚大な被害をもたらしている。写真はテキサス州で住民救出用のボートに乗る男性(2017年 ロイター/Jonathan Bachman)
米テキサス州を直撃した大型ハリケーン「ハービー」は、進路に当たる地域に甚大な被害をもたらしている。テキサス州のアボット知事は30日、今回の被災地域は2005年の「カトリーナ」襲来時よりも大きいと述べ、連邦政府から1250億ドル(約13.8兆円)以上の支援を受ける必要があるとの見方を示した。
被災地への公的支援や保険金の支払い請求など、これまでに示されているハービー襲来の経済的影響の試算は以下の通り。
●緊急支援
米議会はテキサス、ルイジアナ両州向けに数百億ドル規模の緊急支援を迅速に承認する見通し。過去のハリケーン襲来における連邦政府支援で金額が最も大きかったのは05年のカトリーナの1102億ドルで、12年の「サンディ」の539億ドルがこれに続く。
ワシントン・ポスト紙はトランプ大統領が早ければ来週にも議会に包括的な支援を要請すると報じた。
緊急支援は主に被災地からの要請に基づく。一部は連邦緊急事態管理庁(FEMA)を通じて保険未加入の住宅保有者への助成として実施されるほか、中小企業庁(SBA)が企業や非営利団体、住宅の所有者や借り手に低利融資を行う。
連邦政府の緊急支援は最終的に米国の納税者の負担となる。シンクタンク「センター・フォー・アメリカン・プログレス」の試算によると、2011─13年に家計が負担した災害支援コストは1世帯当たり年平均400ドル前後。
●保険金の支払い
ハリケーンはさまざまな種類の物的損害を引き起こすが、ハービーはヒューストン近隣に豪雨をもたらしたため、洪水が被害の中心となっている。
民間の損害保険では通常、洪水は補償の対象外となっている。米国で洪水を補償対象とするのは、連邦政府の保険である「国家洪水保険プログラム(NFIP)」のみ。NFIPはオールステートやアシュラントなど民間の保険会社が取り扱っている。
NFIPは既に多額の負債を抱えている。米議会は被災地への緊急支援に加えて、ハービー襲来に伴う保険金請求に対応するためにNFIPに対する数十億ドルの規模の資金注入を迫られる公算が大きい。