あのジカ熱も?「ハービー」の被災者を感染症が襲う
多くの感染症は自然に治るが、抗生物質による治療が必要なケースもある。例えばレジオネラ症の治療には、アジスロマイシンかシプロフロキサシンの投与が必要だ。ヒューストン当局は、これらの抗生物質と破傷風のワクチンを備蓄した臨時の移動式医療機器を補充し、感染症の治療と感染拡大の防止に当たっている。
洪水で出た水は、屋内環境にも悪影響を及ぼし、特に住宅にカビが発生しやすくなる。空気中に浮遊するカビの胞子が増殖すれば、深刻な健康リスクをもたらす。カビのアレルギーやぜんそくの患者は特に危険だ。そうした患者は、カビの増殖によって呼吸困難や発疹、一般的なアレルギーの症状が出る恐れがある。今回の洪水で、ヒューストンの気候は一層じめじめと蒸し暑くなったため、停電でエアコンが使えないまま屋内で過ごすのは非常に大変だ。
「ヒューストンの湿度の高さは有名だ」と、災害復旧の専門家で、水トラブルの応急措置やカビ対策が専門の全米展開のフランチャイズ業者「アドバンタクリーン」(AdvantaClean)の創業者兼CEOであるジェフ・ドゥランは言う。
ドゥランは2005年のカトリーナや2012年のサンディをはじめ、数々の大型ハリケーン後の清掃活動に携わった経験がある。今回も早速ノースカロライナ州にある本社からヒューストンに200人余りの職員を派遣し、冠水して泥まみれになった屋内を再び生活できる場所へと復旧する体制を整えた。
ジカウイルスの国内初感染は州内
テキサス州は、ちょうど大量の蚊に悩まされる季節でもある。洪水で溜まった水は、ヒューストンの蚊が大量発生する元凶になり得ると、専門家は指摘する。特に、ジカウイルスや黄熱を含めた数多くの深刻なウイルスを媒介するネッタイシマカやヒトスジシマカなどが、発生しやすいという。(7月には、ヒューストンから車で5時間離れたテキサス州南部ヒダルゴ郡で、アメリカで今年最初のジカウイルスの国内感染が確認された)。
前例のない洪水の最中に蚊の発生を食い止めるのは困難を極める。広範囲の冠水した地域で、殺虫剤を使っても効果はない。ほとんどの住民にとって、蚊に刺されないための唯一の対策は、長袖のシャツと長ズボンを着用し、ディートという成分が入った虫よけを使用することだとトッシュは言う。
テキサス州の20以上の病院で、職員や患者が避難するか、臨時閉鎖となったため、水を媒介した感染症の患者に治療を施すのが難しくなる恐れがある。同州保健省は、今後感染症や何らかの病気が発生すれば、数千人のヒューストンの住民が一時避難している避難所やその周辺の居住区を中心に、すぐに調査する準備ができているという。
(翻訳:河原里香)