最新記事

災害

あのジカ熱も?「ハービー」の被災者を感染症が襲う

2017年8月29日(火)17時50分
ジェシカ・ファージャー

多くの感染症は自然に治るが、抗生物質による治療が必要なケースもある。例えばレジオネラ症の治療には、アジスロマイシンかシプロフロキサシンの投与が必要だ。ヒューストン当局は、これらの抗生物質と破傷風のワクチンを備蓄した臨時の移動式医療機器を補充し、感染症の治療と感染拡大の防止に当たっている。

洪水で出た水は、屋内環境にも悪影響を及ぼし、特に住宅にカビが発生しやすくなる。空気中に浮遊するカビの胞子が増殖すれば、深刻な健康リスクをもたらす。カビのアレルギーやぜんそくの患者は特に危険だ。そうした患者は、カビの増殖によって呼吸困難や発疹、一般的なアレルギーの症状が出る恐れがある。今回の洪水で、ヒューストンの気候は一層じめじめと蒸し暑くなったため、停電でエアコンが使えないまま屋内で過ごすのは非常に大変だ。

「ヒューストンの湿度の高さは有名だ」と、災害復旧の専門家で、水トラブルの応急措置やカビ対策が専門の全米展開のフランチャイズ業者「アドバンタクリーン」(AdvantaClean)の創業者兼CEOであるジェフ・ドゥランは言う。

ドゥランは2005年のカトリーナや2012年のサンディをはじめ、数々の大型ハリケーン後の清掃活動に携わった経験がある。今回も早速ノースカロライナ州にある本社からヒューストンに200人余りの職員を派遣し、冠水して泥まみれになった屋内を再び生活できる場所へと復旧する体制を整えた。

ジカウイルスの国内初感染は州内

テキサス州は、ちょうど大量の蚊に悩まされる季節でもある。洪水で溜まった水は、ヒューストンの蚊が大量発生する元凶になり得ると、専門家は指摘する。特に、ジカウイルスや黄熱を含めた数多くの深刻なウイルスを媒介するネッタイシマカやヒトスジシマカなどが、発生しやすいという。(7月には、ヒューストンから車で5時間離れたテキサス州南部ヒダルゴ郡で、アメリカで今年最初のジカウイルスの国内感染が確認された)。

前例のない洪水の最中に蚊の発生を食い止めるのは困難を極める。広範囲の冠水した地域で、殺虫剤を使っても効果はない。ほとんどの住民にとって、蚊に刺されないための唯一の対策は、長袖のシャツと長ズボンを着用し、ディートという成分が入った虫よけを使用することだとトッシュは言う。

テキサス州の20以上の病院で、職員や患者が避難するか、臨時閉鎖となったため、水を媒介した感染症の患者に治療を施すのが難しくなる恐れがある。同州保健省は、今後感染症や何らかの病気が発生すれば、数千人のヒューストンの住民が一時避難している避難所やその周辺の居住区を中心に、すぐに調査する準備ができているという。

(翻訳:河原里香)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

WHOテヘラン事務所近くで攻撃、職員に負傷者なし=

ビジネス

ユニリーバ食品事業、マコーミックと統合合意 650

ワールド

米企業標的に報復攻撃へ、イランの革命防衛隊が表明 

ワールド

中国・パキスタンが外相会談、中東巡る早期の和平協議
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
2026年4月 7日号(3/31発売)

国際基準の情報開示や多様な認証制度──本当の「持続可能性」が問われる時代へ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 2
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引、インサイダー疑惑が市場に波紋
  • 3
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イラン恐怖」の正体
  • 4
    初の女性カンタベリー大主教が就任...ウィリアム皇太…
  • 5
    年金は何歳からもらうのが得? 男女で違う「最適な受…
  • 6
    中国がイラン戦争最大の被害者? 習近平の誤った経…
  • 7
    韓国・週4.5日労働制が問いかけるもの ──「月曜病」解…
  • 8
    アリサ・リュウの自由、アイリーン・グーの重圧
  • 9
    北京に代わる新都市構想は絵に描いた餅のまま...大幅…
  • 10
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 1
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 2
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反対署名...「歓迎してない」の声広がる
  • 3
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が育んだ「国民意識の違い」とは?
  • 4
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度…
  • 5
    中国最大の海運会社COSCOがペルシャ湾輸送を再開──緊…
  • 6
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 7
    映画『8番出口』はアメリカでどう受け止められた?..…
  • 8
    作者が「投げ出した」? 『チェンソーマン』の最終…
  • 9
    オランウータンに「15分間ロックオン」された女性のS…
  • 10
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 10
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中