最新記事

キャリア

もはや常識? 日本の就活に「インターン」がもたらす功罪とは

2017年8月15日(火)17時05分
福島創太(教育社会学者)

就職みらい研究所が今年の2月に出した就職白書2017では、新卒採用を実施している企業のうち、2016年度にインターンシップを実施した(調査時点で予定含む)企業は 64.9%(2015年度より9.4ポイント増加)。実施対象に大学1年生、2年生を含む企業もそれぞれ3割ずつ。そして2017年卒の内定者の中にインターンシップ参加者がいた企業は72.5%。インターンシップに参加することが内定獲得に有利という風にも読み取れる。学生の立場なら、焦って、参加することに躍起にもなるだろう。

学生がインターンで得られる価値とは

もちろん、内定を獲得したい企業のインターンに参加できても、希望通りの結果になるとは限らない(稀にお祈りメールを受け取ったことがない人もいると思う)。

では、希望の企業から内定が出なかったとき、インターンに明け暮れた時間に意味があったと思えるだろうか。

企業の実態はこうだ。就職みらい研究所の調査では、インターンの実施目的を問う項目(複数回答可)において、「学生に就業体験の機会を提供することで、社会貢献する」と答えた企業が2014年は74.9%もあったのに対し、2017年には51.1%まで落ち込んだ。つまり、大学生自身の成長といったメリットを目的として掲げている企業は明らかに減っている。

内定欲しさに焦る学生が、青田刈りしたい企業からの選別にかけられ、ただただ彼らの貴重な日々が過ぎ去っていっては参加した学生の時間はあまりにも報われない。

学生が認識すべきこともある

大学生時代の過ごし方や成長は、就職先の決定や就職後の活躍に当然大きな影響を持つ。

大学歴に対する育った家庭の経済状況の影響の大きさは、前回の記事で、すでに明らかになっているが、企業が学生の能力を判断するタイミングが早いほど、家庭の経済状況による内定獲得や内定先企業への影響は大きくなるだろう。大学4年間を成長の機会として、様々な挑戦や取り組みのなかでスキルをアップさせることができれば、こうした構造を抜け出す一つのきっかけとなるかもしれない。

内定以外のもの、つまり成長の機会が得られるとしたらインターンの意味も変わってくるだろう。

そんな内定以外の、学生の成長を目的に謳ったサービスを展開しようとする「企業側」の新しい動きもある。

株式会社リクルートキャリアは今年の5月、大学1年生~2年生向けの長期インターンシップサイトを9月に開設することを発表した。目的としては 自分の持ち味や将来やりたいことを学生に明確にしてもらい、就職活動時のミスマッチを減らすことしている。

株式会社ベネッセホールディングスとパーソルキャリア株式会社(旧株式会社インテリジェンス)、が合弁会社として立ち上げた株式会社ベネッセi-キャリアは、「働くを知る」、「経験を積む」、「オファーを受ける」という3つのステップから構成される新サービスDODAキャンパスを先月スタートさせた(本格稼働は9月)。自己分析や長期有給インターンシップ、オンライン講座、そして採用時のオファーといった機能が含まれている。こちらの目的としても、大学低学年期に対するキャリア支援といったことが掲げられている。

【参考記事】大学教育を否定する、ユニクロ「大学1年4月採用」の衝撃
【参考記事】就活でやってはいけない10の間違い

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米10月求人件数、1.2万件増 経済の不透明感から

ワールド

スイス政府、米関税引き下げを誤公表 政府ウェブサイ

ビジネス

EXCLUSIVE-ECB、銀行資本要件の簡素化提

ワールド

米雇用統計とCPI、予定通り1月9日・13日発表へ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【クイズ】アジアで唯一...「世界の観光都市ランキング」でトップ5に入ったのはどこ?
  • 3
    中国の著名エコノミストが警告、過度の景気刺激が「財政危機」招くおそれ
  • 4
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 5
    「韓国のアマゾン」クーパン、国民の6割相当の大規模情…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「1匹いたら数千匹近くに...」飲もうとしたコップの…
  • 8
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    ゼレンスキー機の直後に「軍用ドローン4機」...ダブ…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 7
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 8
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 9
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中