建軍90周年記念活動から読み解く習近平の軍事戦略
それまでの陸軍の「7大軍区」を撤廃して、「5大戦区(東部・南部・西部・北部・中部戦区)」を設置し、さらに「いざというとき」には、習近平・中央軍事委員会主席(=中共中央総書記)が直接指令を下せば戦区と軍種(陸海空軍+ロケット軍+戦略支援部隊)が一斉に動くという形にした。
これは建国以来、(旧)ソ連を模倣してきたのを撤廃して、アメリカ大統領のように、国のトップが「軍の最高司令官」として直接命令を下すことができる命令指揮系統に持っていきたかったからだ。それまでの7大軍区を治める「総参謀部、総政治部、総装備部、総后勤部」は腐敗の坩堝(るつぼ)と化していただけでなく、命令指揮系統をだぶつかせていたので、それらの迂回ルートも撤廃した。
アメリカ式に転換することによって、「アメリカに追いつき追い越せ」という軍事戦略を実施していき、効率と即戦力を高め、軍事的にも世界のトップに立とうという野望に満ちた軍事大改革だった。
だからこそ、今般の建軍90周年記念の軍事パレードでは、野戦軍の真っただ中で、迷彩色の軍服に身を包んで軍事訓練基地で行なったのだ。中国語では軍事パレードという言葉を使わず、「閲兵式」と称しているが、誰か他人に見せる儀礼的なものではなく、砂塵舞う中で、兵士が軍用トラックに駆け付け乗り込むという段階からスタートした実践的な野戦状況を再現した閲兵式だった。だから儀仗兵はいない。
習近平は自分がその野戦の現場にいることと、兵士たちと同じ迷彩色の軍服を着用することによって、野戦現場の総司令官が習近平であるということと、軍は党の総書記の命令のもとにあるということを、兵士全員に深く印象付けることが目的であったと言っても過言ではない。
訓練が行き届いているせいもあろうが、兵士一人一人の目と表情は、「習近平」一点に精神の全てを注いでいるという緊張感と覚悟に満ちていた。
ふと、日本の防衛省のダラダラと長引いた不祥事を連想し、これは憲法改正以前の問題だろうと、嘆かわしい気持ちになったものだ。
軍民融合――人民大会堂における習近平のスピーチ
7月31日は人民大会堂で盛大な晩餐会が開催され、8月1日午前10時(北京時間)から、人民大会堂で習近平のスピーチがあった。
筆者として印象に残ったのは二つの言葉。
一つは「どんなに先進的な武器を持っていたとしても、戦う精神が十分でなければ勝利を収めることはできない」という主旨の言葉と「軍民融合」を強調したことである。
前者は、「勝利から勝利へ」あるいは「いつでも戦うことができ、戦ったら必ず勝つ」といった数多くのスローガンにより、これまでも「強軍大国化」として言われてきた言葉ではあるが、もっと重要なのは「党の精神に従い、党の指示が全てだ」という「党への絶対的な、永遠の忠誠」がなければならないと言ったことである。