最新記事

安全保障

稲田防衛大臣辞任、中国でトップニュース扱い----建軍90周年記念を前に

2017年7月31日(月)08時19分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

そして28日の北京時間10:54になると、CCTVは日本のNHKが稲田大臣が記者会見場で辞任したことを宣言したと報道。8月3日の内閣改造までの間は岸田外務大臣が防衛大臣を兼務するということまで詳細に伝えている。

28日の16:28になると、「防衛大臣の辞職に対して安倍(首相)が自分に任命責任があるとして謝罪した」と、CCTVは全国ニュースで伝えた。

たった、28日の一日の一部を追っただけでも、これだけ多くの報道がなされていることから、これまでの報道の頻度をご推測頂けるものと思う(これにさらにお昼のニュースがあるのだが、リンク先が見つからなかった)。

8月1日は建軍90周年記念日

なんともやり切れないのは、8月1日が中国人民解放軍の建軍90周年記念日に当たることだ。その華麗なる報道は、以下の「ポスターの数々」からも、ご想像頂けるだろう。このページの6番目にあるポスターを見て頂きたい(情報が増減して、場所が動く可能性がある)。

そこに「中国夢、強軍夢」という文字があるのをご確認いただけるだろうか?

いうまでもなく、「中国の夢、強軍の夢」という意味だ。

「強軍大国の夢」を実現しようと、国をあげて習近平のもとに力を結集させている。

今年(の、たぶん11月に)は、5年に1回の党大会(第19回党大会)がある。

それに向けて、習近平政権の業績を讃える「改革は徹底して行おう」という連続ドキュメンタリー番組がCCTVでテレビ放映されている。その第7回目は「強軍之路」(強軍への道)(上) (アクセスできない場合もある。45分間ほどのドキュメンタリー番組)。第8回目も「強軍之路」(下)である。

そこでは軍の最高司令官としての絶大な力を印象付ける、習近平への一糸乱れぬ忠誠心と強軍大国の現状と未来像が描かれている。CCTVはこの番組を繰り返し報道し、中国は「強軍の夢」一色に染められているのが現状だ。

一党支配体制下で厳しい言論弾圧をしている「このような国」と比較したくはないが、しかし日本も国際社会の中で生きている以上、隣にある「このような国」が、「どのような状況にあるのか」は掌握しておかなければなるまい。

その国は、あたかも「日本の防衛力と統制能力」を、あざ笑わんばかりに、「瞞報門」と「強軍大国」を同時並行で報道しているのだ。

愉快でないことは言うに及ばず、これは「危険な国際情況」ではないだろうか。

なお、建軍90周年記念閲兵式は7月30日(日)午前9時から朱日和訓練基地に於いて行なわれる(「朱日和」というのは内蒙古自治区錫林郭勒盟スニタ右旗の南部にある地名だ。「zhu-ri-he」と発音し、蒙古語で「心臓」という意味。1957年に毛沢東が戦車の秘密軍事訓練基地として選んだ)。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ゼレンスキー氏、マクロン氏とパリで会談 「持続可能

ビジネス

ビットコイン再び9万ドル割れ、一時6.1%安 強ま

ワールド

プーチン氏、2日にウィットコフ米特使とモスクワで会

ビジネス

英住宅ローン承認件数、10月は予想上回る 消費者向
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「世界一幸せな国」フィンランドの今...ノキアの携帯終了、戦争で観光業打撃、福祉費用が削減へ
  • 2
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業界を様変わりさせたのは生成AIブームの大波
  • 3
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果のある「食べ物」はどれ?
  • 4
    【クイズ】1位は北海道で圧倒的...日本で2番目に「カ…
  • 5
    中国の「かんしゃく外交」に日本は屈するな──冷静に…
  • 6
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 7
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 8
    600人超死亡、400万人超が被災...東南アジアの豪雨の…
  • 9
    メーガン妃の写真が「ダイアナ妃のコスプレ」だと批…
  • 10
    コンセントが足りない!...パナソニックが「四隅配置…
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 3
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 4
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 5
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 6
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 7
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 8
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    子どもより高齢者を優遇する政府...世代間格差は5倍…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中