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この赤い丸がグラフィック・デザインの力、と原研哉は言う

2017年6月15日(木)19時40分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

 赤い丸ということで共通していますが、イエラ・マリの絵本『あかいふうせん』は、初めて目にした時に震えるほどの感動を覚えた一冊です。

 線画で描かれた子どもがガムを膨らませていて、それがだんだん大きくなって口から離れて、風船になり、その形が少しくぼんでリンゴになり、リンゴが落ちて石にぶつかって割れてチョウチョとなり羽ばたいて、草むらの中で花になり、それを子どもが手にすると雲行きが怪しくなってきて、花が広がって傘になる。ペンで描かれた簡潔な手描きの線も美しいし、単なる赤い図形がだんだんとメタモルフォーゼしていくことで、言葉は一切ありませんが、素晴らしく豊かな情景が見えてくる。単純化された図像の多義性を思い知らされました。

 本もグラフィック・デザインのひとつだと思いますが、私は本のことを「情報の彫刻」と呼んでいます。情報というのは、上手く作用すれば有効なものかもしれませんが、散らかっていたらゴミ同然。書籍には、文章や図像や写真を彫刻のように未来永劫留まるものとして紙に定着させてある。ここでも、物事を「静止させること」に、デザイナーの力が使われています。

(Text:上條桂子)

【参考記事】2000年代で最も重要なアートブックの出版社

原 研哉 Kenya Hara
グラフィック・デザイナー
1958年生まれ。日本デザインセンター代表取締役。武蔵野美術大学教授。アイデンティフィケーションやコミュニケーション、すなわち「もの」ではなく「こと」のデザインが専門。おもな仕事に無印良品のビジュアルディレクション、松屋銀座リニューアル、「HAPTIC」「RE DESIGN」「HOUSE VISION」の展覧会プロデュースなど。

【参考記事】スヌーピーとデザインと村上春樹――ブックデザイン界の巨匠チップ・キッドに聞く

※第2回:「絵文字」を発明したのは、デザイナーでなく哲学者だった


『Pen BOOKS 名作の100年 グラフィックの天才たち。』
 ペン編集部 編
 CCCメディアハウス

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