英総選挙で大激震、保守党の過半数割れを招いたメイの誤算
保守党はマニフェストで、高齢者の介護費用を本人が死亡した後の自宅売却でまかなう福祉改革を提案したが、これに対して、残された家族が自宅を手放さなければならならない「認知症税」だという批判が上がった。そこでメイは、この負担分の上限を設けることで、実質的な政策の「撤回」を余儀なくされた。
「鉄の女」と呼ばれたサッチャーとは、比較にならない弱腰だ。またメディアへの対応も不十分で、コービンさえ出演したテレビ党首討論に姿を見せなかった。
これに対してコービンの労働党はマニフェストで、医療サービスへの大規模支出や大学授業料の再無料化といった福祉充実策を並べて有権者の支持を拡大した。
選挙戦中のメイは、他のEU加盟国から見てとても信頼に足る指導者には見えなかっただろう。ブレグジット交渉はこの6月末から本格化する予定だったが、メイ自身がその実態を理解していないという報道もされている。
前述のドブスは、「総選挙が終わってもイギリスは何ら前進していない。ブレグジットが何を意味して、イギリスにどう影響するか具体的な方針は見えない」と話している。
【参考記事】イギリス離脱交渉の開始とEUの結束
他の欧州諸国(特にドイツ)のメディアはさらに手厳しい。欧州の各紙には「大英帝国の夢再び......しかしそれはただの幻想」とか、強さを示すはずだったメイは「どうしてしまったのか?」という見出しが躍った。
メイは政権安定のために実施した総選挙で保守党の議席を改選前より減らし、単独過半数まで失った。さらにブレグジットに立ち向かうイギリスの団結も揺らいでいる。むしろこの選挙で、イギリスが今やそれどころではないことを示してしまった。とんだ計算違いだ。