割増運賃、半分座席......東京の満員電車対策はロンドンに学べ
電車遅延時は「自主的に振替輸送」も
これまでに述べたように、ロンドンの鉄道における運賃徴収は「ゾーン制」で、定期券でさえも「ゾーン1内7日間有効」とか、「ゾーン2-3内1カ月間有効」のように定められている。これはいろいろな面で利点が大きい。
ロンドン地下鉄は設備が古く、時として車両や信号などに障害が起こる。いきなり不通になってしまうことも日常茶飯事だ。だが、「ゾーン制」のおかげで、利用者自ら最適ルートを探して目的地に向かうことができる。しかも、振替ルートは地下鉄以外の鉄道でもいいし、定期券の所持者ならバス全線も追加料金なしで乗ることができる。日本とは違い、駅員から振替乗車票などをもらうという手間も生じない。
不通や大きな遅延が起きたとき、最適ルートの選択には、スマートフォンのアプリと地下鉄のほぼ全駅に付けられているWi-Fi網が役に立つ(残念ながら、携帯電話回線は地下駅構内につながっていない)。
英国にも、日本で親しまれている路線検索アプリ「ナビタイム」の現地版がある。起動画面が前述の「地下鉄路線図」とまったく同じ仕様で、かつ出発地と目的地をタッチすると運行情報が得られる仕組みだ。ロンドン交通局も同様の情報を出しているが、慣れない英語の地名を打ち込む手間が生じる。「ナビタイム」はバスルートの最適プランも弾き出せるので、都心で地下鉄が止まってしまったときのツールとしてなかなか役に立つ。
また、遅延の被害に遭った乗客は鉄道運営会社にそのとき使った運賃の全額を取り立てできる制度がある。請求は本来の目的地への到着時間より15分以上余分にかかった際に認められる。運営会社は、取り立て請求をできるだけ避けたいという理由もあって、遅延防止に心掛けているわけだ。
運賃面でいくら特典をつくっても、一方で早いペースで利用客が伸びているのが現実だ。列車本数の増発や信号システムの改良でより多くの乗客をさばこうとしているが既存のインフラでは限界もある。
そんな中、電車の車内で座れる人数をもっと増やそう、という新たなアイデアが発表された。「パブのスツール」のような形状の"いす"「ホライゾン」だ。
着席できる乗客が3割増える
そのユニークなデザインはロンドンを拠点に、列車や旅客機のいすや内装を手がけるプリーストマングード社が考案。従来の座席と比べ、着席部分の長さが半分しかない。お尻で寄りかかれる程度のものだが、それでも1時間以上立ちっぱなしになるよりはずいぶんと楽だ。