割増運賃、半分座席......東京の満員電車対策はロンドンに学べ
「ピーク時を避けて、閑散時に移動を」と促す交通局の広告。モチーフは富士山?(ピカデリーサーカス駅で、筆者撮影)
電車の混雑問題は何も日本だけの話ではない。19世紀に世界初の地下鉄が走ったロンドンもしかり。古い鉄道インフラを生かしながら、あの手この手で混雑解消を図っている。
ロンドンの地下鉄には、行き先別の運賃表がない
混雑解消の秘訣を紹介する前に、ロンドンの鉄道運賃システムについて簡単に説明しておこう。
市内を走っている鉄道は、大きく分けて地下鉄などを運営する「ロンドン交通局」と、旧国鉄の運営を引き継いだ「ナショナルレール」のどちらかに属する。これらの鉄道はひとつの運賃システムにまとめられており、相互に乗り継いでも「通し運賃」が適用される(高速鉄道の「サウスイースタンハイスピード」と、「ヒースローエクスプレス」、テムズ川のロープウェーである「エミレーツエアライン」を除く)。
運賃設定の計算根拠は、日本のような2駅間距離ではなく、ロンドン中心からの同心円で区切られた「ゾーン制」で定められる。最も中心のエリアは「ゾーン1」と呼び、そのゾーン内なら何駅乗ろうが均一運賃が適用される。以下、ゾーンをまたぐといくら、という形で運賃が設定されている。
あらためて路線図を見直すと、中心部から外に向かって1から9までの数字が記された「ドーナツ状の層」が描かれている。
これは余談だが、地下鉄と旧国鉄の運賃システムを統一したおかげで、2012年夏に開催されたロンドン五輪ではそれが大きく奏功した。組織委員会とロンドン市役所は観戦客全員に「ロンドン全域1日乗車券」を無料で配布すると決断。街中を走る地下鉄、電車、バスなどすべてを自由自在に乗れるようにした。地理不案内な訪英客にとって、市内での移動がずいぶんと楽になっただけでなく、道路交通の渋滞緩和につながるという大きな成果を得た。2020年に五輪開催を控えた東京でもこのような思い切った施策を採ってほしいものだ。
通勤ピーク時の利用客をできるだけ減らそうという施策がある。平日の混雑する時間帯に周辺部から都心部(逆向きも同様)に入ると2~3割増の運賃が適用される。つまり、混雑しない時間帯の運賃と差を付けて、時差通勤を促そうとしているわけだ。
ちなみに「ピーク」の時間帯は平日の始発~9時30分までと16時~19時。割増運賃は非接触型ICカード「オイスター」の利用者のうち、定期券を持たない「乗車ごとに運賃を支払う乗客」に適用される。
またこんな施策もある。郊外からロンドンを目指す鉄道利用者向けに「ロンドン市内交通1日乗車券付き往復券」というチケットがあるのだが、これも地元の郊外駅を平日9時30分以降に出発することを条件に大幅に値引きしている。特典を付けることで、都心へのピーク時における人の流入を少しでも食い止めようとしているわけだ。