次に来るのは米中アルミ戦争
中国メーカーでは設備拡大が続いており、アルミ生産量は今年2月にまたもや記録を更新して295万トンに達した。
アルミと鉄鋼だけでなく、セメント、ガラス、太陽電池などでも中国の過剰生産が問題になっている。その背景にあるのが中国政府の補助金だ。
「世界の工場」として高度成長を遂げた中国も、ここ10年ほどは成長率が伸び悩んでいる。工場閉鎖で大量の失業者が出れば、政治的混乱が広がる恐れがあるため、政府は補助金を出して工場と雇用を守っている。中国のアルミメーカーの多くは補助金なしでは今の生産規模を維持できない。
そもそも、中国のアルミ製錬が世界の生産量の5割近くを占める巨大産業になったこと自体が異常だ。アルミ製錬は大量の電力を消費するため、電気代が安くなければ採算が取れない。例えばアイスランドでアルミ産業が盛んなのは、豊富な地熱エネルギーを利用できるからだ。
中国の電気料金はアメリカやEUよりも大幅に高いが、国有の大手製錬会社は電気料金の減免措置を受けている。
不公正な競争がこれまであまり問題にならなかったのは理由がある。鉄鋼は世界中の多くの国で生産されているため、中国の過剰供給に一斉に抗議の声が上がったが、アルミ生産はごく少数の国に集中している。
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業界からの相次ぐ訴え
しかもゲーリーによると、米アルミ業界は鉄鋼業界ほど強力に政府に対応を求めてこなかった。「鉄鋼業界は声高に抗議の声を上げてきたが、アルミ業界の動きは鈍かった。アメリカのアルミ産業の衰退は鉄鋼よりも深刻だというのに」
オバマ前政権は政権交代を間近に控えた今年1月、中国がアルミ産業に不当な補助金を提供しているとしてWTOに提訴した。反ダンピング関税のような応急措置ではなく、根本的な問題である過剰供給に対処するためにWTOに提訴が行われたのはこれが初めてだ。
提訴に基づいて米中の協議が行われることになるが、ロシア、カナダ、日本、EUなど他のアルミ生産国も協議参加を希望している。