最新記事

貿易

次に来るのは米中アルミ戦争

2017年5月31日(水)10時00分
ベサニー・アレン・イブラヒミアン

magb170531-alumi02.jpg

中国の工場で輸出用のアルミ地金をチェックする労働者 REUTERS

中国メーカーでは設備拡大が続いており、アルミ生産量は今年2月にまたもや記録を更新して295万トンに達した。

アルミと鉄鋼だけでなく、セメント、ガラス、太陽電池などでも中国の過剰生産が問題になっている。その背景にあるのが中国政府の補助金だ。

「世界の工場」として高度成長を遂げた中国も、ここ10年ほどは成長率が伸び悩んでいる。工場閉鎖で大量の失業者が出れば、政治的混乱が広がる恐れがあるため、政府は補助金を出して工場と雇用を守っている。中国のアルミメーカーの多くは補助金なしでは今の生産規模を維持できない。

そもそも、中国のアルミ製錬が世界の生産量の5割近くを占める巨大産業になったこと自体が異常だ。アルミ製錬は大量の電力を消費するため、電気代が安くなければ採算が取れない。例えばアイスランドでアルミ産業が盛んなのは、豊富な地熱エネルギーを利用できるからだ。

中国の電気料金はアメリカやEUよりも大幅に高いが、国有の大手製錬会社は電気料金の減免措置を受けている。

不公正な競争がこれまであまり問題にならなかったのは理由がある。鉄鋼は世界中の多くの国で生産されているため、中国の過剰供給に一斉に抗議の声が上がったが、アルミ生産はごく少数の国に集中している。

【参考記事】中国「一帯一路」国際会議が閉幕、青空に立ち込める暗雲

業界からの相次ぐ訴え

しかもゲーリーによると、米アルミ業界は鉄鋼業界ほど強力に政府に対応を求めてこなかった。「鉄鋼業界は声高に抗議の声を上げてきたが、アルミ業界の動きは鈍かった。アメリカのアルミ産業の衰退は鉄鋼よりも深刻だというのに」

オバマ前政権は政権交代を間近に控えた今年1月、中国がアルミ産業に不当な補助金を提供しているとしてWTOに提訴した。反ダンピング関税のような応急措置ではなく、根本的な問題である過剰供給に対処するためにWTOに提訴が行われたのはこれが初めてだ。

提訴に基づいて米中の協議が行われることになるが、ロシア、カナダ、日本、EUなど他のアルミ生産国も協議参加を希望している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ベセント米財務長官、インドに対する追加関税撤廃の可

ワールド

米、嵐で16万戸超が停電・数千便が欠航 異常な低温

ワールド

市場の投機的、異常な動きには打つべき手を打っていく

ワールド

米ミネアポリスで連邦捜査官が市民射殺 移民取り締ま
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:「外国人問題」徹底研究
特集:「外国人問題」徹底研究
2026年1月27日号(1/20発売)

日本の「外国人問題」は事実か錯誤か? 7つの争点を国際比較で大激論

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡張に新たな対抗手段
  • 2
    データが示す、中国の「絶望的な」人口動態...現実味を帯びる「超高齢化」による「中国社会崩壊」
  • 3
    麻薬中毒が「アメリカ文化」...グリーンランド人が投稿したアメリカを嘲笑する動画にネット爆笑
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    40代からは「積立の考え方」を変えるべき理由──資産…
  • 6
    【銘柄】「住友金属鉱山」の株価が急上昇...銅の高騰…
  • 7
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 8
    ニュージーランドの深海に棲む、300年以上生きている…
  • 9
    サーモンとマグロは要注意...輸入魚に潜む「永遠の化…
  • 10
    「楽園のようだった」移住生活が一転...購入価格より…
  • 1
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡張に新たな対抗手段
  • 2
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コングスベルグ社のNSMにも似ているが...
  • 3
    データが示す、中国の「絶望的な」人口動態...現実味を帯びる「超高齢化」による「中国社会崩壊」
  • 4
    ラブロフ、グリーンランドは‌デンマーク​の「自然な…
  • 5
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレ…
  • 6
    ニュージーランドの深海に棲む、300年以上生きている…
  • 7
    完全に「ホクロ」かと...医師も見逃した「皮膚がん」…
  • 8
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の…
  • 9
    韓国が「モンスター」ミサイルを実戦配備 北朝鮮の…
  • 10
    麻薬中毒が「アメリカ文化」...グリーンランド人が投…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 3
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 4
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 5
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 9
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
  • 10
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中