最新記事

労働

全国の図書館職員は、今や半分以上が非正規

2017年5月10日(水)14時50分
舞田敏彦(教育社会学者)

図書館職員の非常勤率は地域によって異なっている。47都道府県の数値を計算し、地図に落としてみた。<図2>は、1990年度と2015年度の模様を比較したものだ。

maita170510-chart02.jpg

1990年度は全体的に色が薄いが、2015年度は軒並み濃い色で染まっている。現在ではほとんどの都道府県で図書館職員の非常勤率が半分を超えている(長崎県では7割)。図書館職員の非正規化が全国的に進んでいることがわかる。

図書館職員の非正規化があまりに進むのは問題がありそうだ。よく言われるのは、サービスの質の低下だ。働く職員にすれば、低賃金労働の増加(常態化)を意味する。「官製ワーキングプア」という言葉もあるくらいで、官の世界では正規・非正規の賃金格差は凄まじい。

【参考記事】日本は若年層の雇用格差を克服できるのか

今回みたのは図書館職員だが、公民館や博物館といった他の社会教育施設でも、職員の非正規化は進んでいるものと見られる。余暇社会・生涯学習社会といわれる現在、これらの施設が果たす役割は大きい。図書館職員の増加はその表れだが、<図1>で見たように、増分のほとんどは非常勤職員だ。

高度化・多様化する学習要求に応えるべく、職員の専門的力量も求められるようになっている。人件費の抑制という理由から非正規化もやむを得ない部分はあるが、それに依存し過ぎると、当該施設に期待される機能の遂行が妨げられることになる。

学校教育と社会教育の資源配分で言うと、現状では前者に偏しているが、その是正も求められるだろう。近い将来(2040年頃)、日本は人口比で「子ども1:大人9」の社会になるのだから。

<資料:文科省『社会教育調査』

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガリニューアル!
毎日配信のHTMLメールとしてリニューアルしました。
リニューアル記念として、メルマガ限定のオリジナル記事を毎日平日アップ(~5/19)
ご登録(無料)はこちらから=>>

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、フェンタニル巡る米の圧力に「断固対抗」=王外

ワールド

原油先物、週間で4カ月半ぶり下落率に トランプ関税

ビジネス

クシュタール、米当局の買収承認得るための道筋をセブ

ビジネス

アングル:全米で広がる反マスク行動 「#テスラたた
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
2025年3月11日号(3/ 4発売)

ジャンルと時空を超えて世界を熱狂させる新時代ピアニストの「軌跡」を追う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない、コメ不足の本当の原因とは?
  • 3
    113年間、科学者とネコ好きを悩ませた「茶トラ猫の謎」が最新研究で明らかに
  • 4
    一世帯5000ドルの「DOGE還付金」は金持ち優遇? 年…
  • 5
    強まる警戒感、アメリカ経済「急失速」の正しい読み…
  • 6
    著名投資家ウォーレン・バフェット、関税は「戦争行…
  • 7
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 8
    定住人口ベースでは分からない、東京23区のリアルな…
  • 9
    テスラ大炎上...戻らぬオーナー「悲劇の理由」
  • 10
    34年の下積みの末、アカデミー賞にも...「ハリウッド…
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天才技術者たちの身元を暴露する「Doxxing」が始まった
  • 4
    アメリカで牛肉さらに値上がりか...原因はトランプ政…
  • 5
    ニンジンが糖尿病の「予防と治療」に効果ある可能性…
  • 6
    「浅い」主張ばかり...伊藤詩織の映画『Black Box Di…
  • 7
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 8
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない…
  • 9
    「絶対に太る!」7つの食事習慣、 なぜダイエットに…
  • 10
    ボブ・ディランは不潔で嫌な奴、シャラメの演技は笑…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 9
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
  • 10
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中