最新記事

韓国大統領選

投票率90%!? 次の韓国大統領に韓国人が望むこと

2017年5月9日(火)15時44分
シャノン・シュワイツァー

朴を失職に追い込んだのは、2016年後半に噴き出したスキャンダルだ。サムスン電子をはじめとする韓国最大規模の財閥も絡んでいた。サムスンの事実上のトップである李在鎔(イ・ジェヨン)は、贈賄の疑いで2月に逮捕され、それ以降、ソウルの拘置所で独房暮らしを送っている。

朴本人は、収賄、強要、職権乱用など18件の罪状で、4月に正式に起訴され、5月2日には、激しいデモが巻き起こるなか、事実上の初公判となる公判準備手続きが開かれた。

こうした状況は、一部の有権者の目には、「チェボル(財閥)」と呼ばれる韓国同族企業の揺るぎない影響力を浮き彫りにするものと映る。チェボルは、長年にわたる政府との癒着により、莫大な恩恵を受けてきた。

韓国の世論調査会社REALMETER(リアルメーター)が5月3日に発表した調査結果によれば、回答者の多く(27.5%)は、投票先を決める最大の判断基準として、「根深い腐敗に取り組む候補者の意欲」を挙げている。それに続くのが、経済改革と国家安全保障だ(それぞれ24.5%、18.5%)。

高い投票率

5月4日と5日には、大統領選挙の事前投票が行われ、記録的な数の有権者が票を投じた。事前投票は2014年の地方選挙から導入された制度だが、大統領選挙では今回が初めてとなる。

韓国の中央選挙管理委員会によれば、事前投票期間の2日間で、有権者総数4200万人の26%にあたる1100万人が、全国3500カ所以上の会場で投票したという。これは、2016年総選挙における事前投票者数の2倍を上回っている。

このような投票率の上昇は、今回の選挙に対する国民の強い関心と、政権交代を求める強い思いを示している。特に、若者のあいだでは関心が高い。中央選挙管理委員会が実施した調査では、回答者の87%近くが、今回の選挙で投票に行くつもりだと答えている。この割合は、2012年に行われた前回の大統領選挙の80%から上昇している。

若い有権者の選挙に対する関心も高く、「投票に行く」と回答した有権者は、2012年の85%から95%に上昇した。こうした若い有権者の多くは、今年はじめに朴の辞任を求め、大挙してデモに押し寄せた人々だ。30歳未満の有権者たちの主要な関心事である「若者の失業率」は、2016年に9.8%という過去最悪の水準となった。若者投票率の上昇は、80万人分を超える公共セクターの雇用創出を公約としている文の追い風になると見られている。

韓国ギャラップが実施した最新の世論調査によれば、支持率では「共に民主党」の文が支持率38%で大きくリード。中道左派の「国民の党」の安哲秀(アン・チョルス)が20%でそれに続いている。

韓国を取り巻く環境と、投票率の高さを考えると、次期大統領は誰であれ、国民の重い負託を果たすことになるだろう。

(翻訳:ガリレオ)

From Foreign Policy Magazine

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中