Readyforのプロジェクト実行者の6割は本職をほかに持つ人
ソーシャルメディアの普及でコラボレーションしやすい時代になった
マギーズのような実例を目の当たりにすると、クラウドファンディングは人の働き方も変えていく力を持っていると感じます。個人が会社の中で培ってきた属人的な部分を、社会のさまざまな課題やイノベーションへの想いにマッチングさせていく。それはこれからの仕事の1つのあり方でしょう。
私が大学院時代に開発した人物検索サイト「あのひと検索 スパイシー」*** は、まさにそんなふうに人をつなげることを目的としたシステムでした。今はフェイスブックやリンクトインのようなソーシャルメディアが普及して、個人の経歴や友人関係がより可視化されるようになりました。それだけ人と人がつながりやすく、コラボレーションもしやすい時代になったといえます。マギーズのようなプロジェクトが、近い将来は当たり前になるかもしれません。
特に若い人の場合、大義があるところに能力やお金を提供したいという思いを持つ人も多いですね。それは社会に貢献したいというより、新しい時代の自己実現だと思いますが、ともあれその流れがソーシャルなプロジェクトをどんどん起こすのではないかとも思うんです。東京オリンピックが終わるころにまた新しい価値観が模索されるかもしれませんが、この先5年くらいはそういう方向に変化していくのではないかと。
それを許容するには企業側のマインドも変わっていく必要があるでしょう。ITを導入して仕事の効率が上がってワーカーの時間が空いたとき、経営者としては会社のためになることをやってほしいと思うけれども、でも厳密に管理してしまうと新しいことは起こらないでしょう。もっと有機的に、立場に関係なくコラボレーションしていく方が面白いし、そういう社会の中でこそReadyforのようなサービスはもっと浸透していくのかなと思います。
企業トップの決断と組織の構造改革が求められる
もう1つ、クラウドファンディングと企業の関係についていえば、新規事業の可能性や潜在的な市場規模を推し量るマーケティングツールとしてReadyforに興味を持ってくださる方もいるのですが、そこでは企業の覚悟が試されることもご理解いただきたいと思っています。
若い世代の人はクラウドファンディングも活用して新しいサービスや製品を生み出したいと意気込むものの、大きな会社だとそれを許してもらえない空気があるとも聞きます。従来的な社内の認可プロセスを経ていない商品が外部に公開されることを怖がる人もいる。その気持ちはよくわかります。クラウドファンディングで多くの支援を獲得できればいいけれども、場合によってはあまり良くない評価を得ることもあるでしょう。
アイデア段階のものや開発中のものであってもカジュアルにオープンにしていくことができるか。ネガティブな評価も含めて受け止めることができるか。クラウドファンディングをテストマーケティングに使う場合、企業にはトップの決断と組織の構造改革が求められます。
とはいえ、面白い分野ではあると思いますね。大企業で仕事をしている人は多いし、そういう方々のノウハウ、知識、ネットワークが、何かやりたいという思いでつながって、それによってさらにアクションが加速することもあるはず。私たちもそのつなぎ役を果たすべく、人がつながる場所を作りたい。そういうことが起こりやすい空気を社会に作っていくことで、みんながハッピーになれたらいいですよね。