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<ワールド・ニュース・アトラス/山田敏弘>

トランプが思わずツイートした、前代未聞のベストセラーの正体

2017年4月24日(月)18時00分
山田敏弘(ジャーナリスト)

アマゾンの説明文には、「現時点で、民主党の敗北について最も徹底して研究され、明瞭に議論をされた本」だと解説されている。要するに、2016年の大統領選の敗北を経て、「民主党に投票をする理由」は「白紙」、つまり何もないということだ。しかもすべて白紙なのだから、英語を読めない外国人でも楽しめるという訳だ。

ただこの本にはちゃんと目次がある。第1章の「経済」に始まり、「外交」「公民権」「教育」「国土安全保障」「エネルギー」「雇用」「犯罪」「移民」「価値観と信条」と第10章まで続く。しかし、どこにも何も書かれていない。

ノウルズはCNNの取材に、「この本のためのリサーチにはかなりの時間を要した」と語り、「民主党に投票するための理由と民主党の実績を観察してみると、それが経済だろうが外交、国土安全保障、公民権だろうが、おそらくすべてのページを真っ白にしておくのが一番だと気がついた」と主張している。

アマゾンのレビューでは、保守とリベラルの中傷合戦が繰り広げられ、それを読むだけでも楽しめる。民主党の重鎮であるナンシー・ペロシ下院議員やチャック・シューマー上院議員に触れたこんなコメントもあった。「ペロシやシューマーが何を考えているのか分からなくなったら、この本を読むべきだ」。

また共和党員に関して「ほとんどの共和党員は文字が読めないから、ちょうどいいのだろう」というレビューもあるし、反対にリベラル派に対して「どんなバカなリベラルでも読めるくらいシンプルに書かれている」というものもある。

アメリカらしい風刺に富んだ、かなり辛辣で"ブラック"な一冊だが、つい先日、米大手出版社サイモン&シュスターが、同著の第2版を出版する契約を結んだばかりで、すでに同社から販売が始まっている。

それにしても、トランプの大統領就任以降、民主党はすっかり存在感をなくしている。政策が「白紙」ということはないだろうが、ぜひとも言いたい放題のトランプ政権に対抗してもらいたものだ。

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