最新記事

中東

トルコを脅かすエルドアンの「ありふれた」独裁

2017年4月14日(金)10時45分
エリオット・アッカーマン(作家、ジャーナリスト)

クーデター未遂事件を受けて政府が発令した非常事態宣言は延長を繰り返し、今も続く。16日の国民投票でエルドアン支持派が勝利すれば、ほぼ無期限に継続されることになりかねない。

トルコ政治はこの3年間、行政権を掌握した大統領として国家に君臨するというエルドアンの野望と、憲法改正に向けた動きに振り回されている。

アメリカとヨーロッパはそれぞれISIS掃討と難民問題に気を取られ、目先の政治的利益を優先してエルドアンの行き過ぎを許容してきた。その結果、独裁的政権の誕生を許し、中東における数少ない民主主義国家の崩壊という長期的問題の種をまいている。

【参考記事】溝が深まるトルコとEUの関係

HDPなどの野党は国民投票で反対票を投じようと訴えているが、欧米各国からその動きを支持するとの声はほとんど上がらない。トルコ国民の間では憲法改正への賛否は拮抗しているが、楽観視はできない状況だ。15年6月の総選挙後のAKPの行動を考えれば、反対が過半数を占めてもエルドアンが素直にそれを認めるとは考えられない。

トルコが独裁国家に堕(だ)したら、国際社会はどう反応するのか。HDPのデミルタシュの短編小説には、それを予言するかのようなくだりがある。

アレッポで新たな爆発事件が起きたとき「通勤途中の人々はまだそのことを知らなかった。彼らはじきにそれを耳にするだろう。だが多くの人は『ありふれた』爆発だ、詳しく知る価値もないと思うだろう」。

From Foreign Policy Magazine

[2017年4月18日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、労働長官にチャベスデレマー下院議員を指

ビジネス

アングル:データセンター対応で化石燃料使用急増の恐

ワールド

COP29、会期延長 途上国支援案で合意できず

ビジネス

米債務持続性、金融安定への最大リスク インフレ懸念
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでいない」の証言...「不都合な真実」見てしまった軍人の運命
  • 4
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 5
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 6
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 7
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 8
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 9
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 10
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 9
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 10
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中