実績32億円以上、行政の資金調達も担うクラウドファンディングReadyfor
防災への備えや予防医療に関係するプロジェクトも増えました。例えば、災害時に安心しておいしく食べられる備食を本の形の箱に詰めた「東京備食」の生産・販売を支援するプロジェクト**** も、目標を上回る支援金が寄せられました。
公共やそれに近い領域のプロジェクトが増えたということで、補助金などの税金だけに頼るのでなく、資金調達のあり方が多様化していることを実感します。事業者や研究者、行政関係者など、それぞれの人がそれぞれのやりたいことに向かって、広く社会の人に支援を呼び掛けて資金調達に成功している。その一端を担えることは、私たちにとっても誇らしいことです。
支援者にとってもリスクを分散できる
もう1つ、2016年のトレンドとしては「地域発の創業」が挙げられます。そもそも2015年までにも地域で新しい企業を作る、地域の企業が新規事業やイノベーションを創出する、あるいは地域密着型のカフェを作るといった案件が増えていたんですね。
小規模でまだ実績のない事業は金融機関も融資をしにくいですが、クラウドファンディングなら財政的な担保はいらないし、多くの人からお金をノーリスクで集めることができます。そうしたメリットに着目いただいたこともあって、2016年は地方銀行や信用金庫など地域の金融機関とも連携し、規模の小さな案件をReadyforを通して応援するようにしたところ、地域発の創業案件のさらなる拡大につながったというわけです。
例えば、これは秋田県の北都銀行からご紹介いただいた案件ですが、地元の元料亭を「あきた舞妓」がお茶や踊りを披露する文化産業施設としてリノベーションするプロジェクト***** に1,400万円もの支援金が寄せられました。実行者は20代の女性です。私も20代で創業を経験した身なのでよくわかりますが、若いと起業の元手となるような実績や資産がないので、金融機関の融資を取り付けるのが本当に難しいんです。そういう人にとって、1,400万円はものすごく価値が大きい。チャレンジに向けて背中を押してもらえます。
お金を出す側にしても、誰か1人が全額負担するのでは事業が失敗したとき大きな損失になりますが、多くの人が少しずつ負担するのでリスク分散できます。実行者にも支援者にも使いやすいツールということで、クラウドファンディングは資金調達の一手段として地域の事業にも今後もっと広まっていくのではないかと見ています。
やりたいことの全てをかなえていく、それがReadyforのミッション
今では月に200件ほどのプロジェクトが新たに登場していますが、サービスを開始した2011年は年間の掲載案件数はわずか50件ほど。続けてこられたのは、創業したのが大学院1年生のときで、収益性や経営についてあまり考えていなかったからです(笑)。Readyforを使ってくれる人たちがいて、その数が少しずつでも増えていることが単純にうれしかったですね。
社員が増えた今でこそ、少しは経営や収益性についても考えをめぐらせるようになりましたけど、それでもやはり、やりたいことの全てをReadyforの場でかなえていくのが私たちのミッションだと考えています。だから掲載するプロジェクトの方向性や内容には特に制限を設けていません。
【参考記事】日本の地域再生を促すシビックプライドとは何か