韓国の次期「左派大統領」が進む道
ソウルの憲法裁判所の前に集まって朴の罷免決定を喜ぶ市民 Kim Hong-Ji-REUTERS
<朴大統領の弾劾・罷免が決定し、次期大統領の最有力となっているのは左派政治家の文在寅だが、反日路線には突き進めない事情が>
3月10日、韓国の憲法裁判所は全員一致で朴槿恵(パク・クネ)大統領の弾劾を妥当と判断し、大統領罷免を決定した。これにより朴は失職し、1人の民間人になった。大統領に認められる刑事訴追の免責特権も失い、一般の裁判所に起訴される可能性が高い。年内に収監されることもあり得る。
半年近く続いた騒動は、韓国の民主主義の在り方、とりわけ汚職問題に対する国民の怒りをかき立てた。朴が長年の親友である女性に国政への介入を許していたとの疑惑が表面化したのは、昨年10月。その後、疑惑は、韓国最大の財閥であるサムスングループも関わる贈収賄スキャンダルに発展した。
韓国では、政界と財界の癒着が汚職を生み続けてきた。87年の民主化以降の歴代大統領は、多くが刑事捜査の対象になっている。そして今回ついに、韓国史上初めて大統領が弾劾・罷免される事態になった。
政治の浄化を求める国民の声は高まっている。この点は、次の大統領が取り組むべき主要な課題になるだろう。
韓国の民主政治にとっては、明るい材料もある。今回の韓国社会の対応は、近代的な自由民主主義国家が大規模な政治スキャンダルにどう向き合うべきかというお手本と言ってもいい。
韓国の汚職問題が欧米や日本より深刻なことは確かだが、汚職に国が食い尽くされることは避けられた。その一因は、韓国の国民が疑惑追及を強く求めたことにほかならない。
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汚職一掃が最重要課題
朴の弾劾・罷免は、韓国に民主主義が根付いている証しと見なせる。大統領といえども法を超越した存在ではなく、憲法の規定に従って弾劾・罷免された。軍隊が市街に出動することもなかった。疑惑が明るみに出て以来、大規模な反朴デモが繰り返されてきたが、アラブの春のような収拾のつかない暴動と混乱に陥ることは避けられている。
実は、大統領弾劾の手続きを規則どおりに粛々と完了した例は世界の歴史上極めて少ない。アメリカのウォーターゲート事件でも、当時のリチャード・ニクソン大統領は74年、弾劾審査の結果を待たずに辞任している。
今回の韓国の状況に最も近い前例と言えば、そのニクソン辞任だろう。このとき、ニクソンの共和党は大打撃を被り、その後の選挙で大敗した。同じようなことが韓国でも起きそうだ。